アルミのサッシや物干しを塗って、数か月で塗料がぺろりとめくれた。あるいは、塗っている最中から塗料が玉になって広がらない。どちらもアルミではよく起きます。
腕の問題ではありません。アルミは、そのままでは塗料が食い付かない金属です。 鉄と同じつもりで塗ると、まず失敗します。
- アルミに塗った塗料が、しばらくしてめくれた
- 塗料がのらず、玉になってはじかれる
- 密着プライマーが要ると聞いたが、何をするものか分からない
- サンドペーパーの番手をどれにすればよいか決められない
- プライマーを塗ったあと、どれくらい待てばよいか分からない

去年サッシを塗ったのに、もうめくれてきました。

アルミは下ごしらえが要る金属です。塗る前にやることが3つあります。
私は工場で機械部品の塗装をして10年になります。扱うのはアルミがほとんどです。 この記事では、なぜアルミに塗料が食い付かないのかと、現場でやっている3つの下地処理をお伝えします。
アルミに塗料が食い付かない理由

原因は表面にできている膜です。目には見えませんが、アルミの表面は必ず膜で覆われています。
塗料が触れているのはアルミではなく膜
アルミは空気中の酸素とすぐに結び付き、表面に酸化の膜を作ります。削っても磨いても、数分でまた膜ができます。
つまり刷毛が触れているのは、金属そのものではありません。いつでもこの膜の上です。 塗料が食い付く相手は、アルミではなく膜のほうだと考えてください。
その膜は、ほかのものと結び付かない
酸化の膜は、それ以上ほかのものと結び付きません。だから内部の金属が守られます。 日本アルミニウム協会は、アルミニウムについてこう説明しています。
アルミニウムは非常に耐食性の優れた材料で、無処理でも充分な耐久性を期待できる
一般社団法人 日本アルミニウム協会
この性質は、塗料に対しても同じように働きます。結び付かない相手に、塗料だけが例外ということはありません。
さびに強い理由と、塗料が付かない理由は同じです。 食い付かないのはアルミの欠点ではなく、長所の裏返しです。
建材のアルマイトはとくに付きにくい
サッシやカーポートなどの建材は、さらに付きにくい状態です。アルマイトという処理がされているためです。電気を使って酸化の膜を人工的に厚く育てたもので、同協会は硫酸水溶液の中で電解して作る、もっとも代表的な表面処理だと説明しています。
自然にできる膜より厚く、硬く、そして表面がなめらかです。 見た目のシルバーやブロンズの色も、この処理で付けています。
問題はこのなめらかさです。つるつるした面には、塗料が引っかかる場所がありません。 結び付かないうえに、引っかかりもない。二重に不利な状態です。

だから鉄のように「サビを落として塗る」では終わりません。食い付く場所を、こちらで作ってやる必要があります。
工場でやる3つの下地処理

工場でも家庭でも、やることは同じです。順番も変えません。

下地処理1 足付けで表面を細かく荒らす
足付けとは、サンドペーパーで表面に細かい傷を付けることです。塗料が引っかかる場所を作る作業だと考えてください。
なめらかな面に塗料はとどまれません。細かい傷があると、そこに塗料が入り込んで固まり、離れにくくなります。 番手の選び方は次の章でくわしく説明します。
下地処理2 脱脂で油分を取り除く
足付けのあとに行います。順番を逆にしないでください。 先に脱脂しても、足付けで出た削りカスと手の脂がまた付きます。
アルミの表面には、製造や運搬のときに付いた油分が残っています。手で触っただけでも脂は付きます。油分の上に塗った塗料は、油ごと剥がれます。 使うのはアルコールか、専用の脱脂剤(売り場では「シリコンオフ」の名前で並んでいます)です。布に含ませて、一方向に拭いてください。 往復させると、落とした脂を戻してしまいます。拭いたあとは素手で触らないでください。 指紋の脂だけでも、そこから剥がれることがあります。
なお、油性塗料を使う予定でペイントうすめ液が手元にあるなら、それでも拭けます。カンペハピオは用途のひとつに油分・汚れ・ワックスのふき取りを挙げています。ただし水性で塗るなら、これのために買う必要はありません。
下地処理3 密着プライマーを塗る
アルミと上塗り塗料の間に入って、両方に食い付く塗料です。のりのような役目をします。
カンペハピオの非鉄金属用密着スプレーは、対応する素材としてステンレス、アルミニウム、クロムメッキ、亜鉛メッキ、ブリキ、真ちゅう、銅を挙げています。塗料がのりにくい金属が並んでいます。
ひとつ注意があります。缶に「アルミ用」と書かれていても、下塗りが要ることがあります。 名前だけで判断せず、商品説明書を確かめてください。くわしくはこの記事の質問の章で説明します。
- 密着プライマーだけで終える
- 足付けを省いてプライマーから始める
- 脱脂をせずにプライマーを塗る
とくに1つ目です。カンペハピオは同製品について「本品は下塗り専用です。必ず上塗り塗装をしてください」と明記しています。プライマーは守る膜ではないので、そのままでは長くもちません。
サンドペーパーの番手は2通りある

同じアルミでも、表面の状態で使う番手が変わります。 ただし、使う下塗り剤や塗料に番手の指定があれば、そちらが優先です。ここで挙げるのは、指定がないときの目安です。

| アルミの状態 | 身近な例 | 番手の目安 |
|---|---|---|
| 素地(膜を付けていない) | アルミ鋳物、工場の部品 | 120番から150番 |
| アルマイト付き | サッシ、カーポート、物干し | 320番から |
素地のアルミは120番から150番で荒らす
私が工場で扱うのは素地のアルミです。120番から150番で足付けをして、最後に240番でならします。 削って困る膜がないので、しっかり荒らせます。
ただし工場では回転するサンダーを使っています。機械は同じ番手でも浅く均一に削れるので、手で研ぐときと同じには考えないでください。 家庭用の下塗り剤に番手の指定があれば、そちらに従ってください。
アルマイトの上は320番から始める
サッシやカーポートはアルマイトがかかっています。日本アルミニウム協会の資料では、屋外で使う建材の膜は20マイクロメートル以上とされています。それでも0.02ミリで、髪の毛の4分の1ほどです。
ここに手で120番を当てると、削れたところと残ったところがまだらになります。 上塗りをしても、そのむらが色の差として出ます。目安はつやが消えるまでです。削り落とすのではなく、光の返り方が変わる程度で止めます。
番手まで指定していたのは、調べた中ではアサヒペンだけでした。アルミに塗るときの番手を、油性シリコン鉄部用で320番から600番、メタルプライマーで600番から1000番としています。そのいちばん粗い320番を、指定がないときの目安にしています。
見分けがつかないときは細かいほうから試す
素地かアルマイトか分からないときは、320番から始めてください。 細かすぎて足りなければ粗くできますが、削りすぎたものは戻せません。
目立たない場所で試すのが確実です。裏側や下端を少し研いで、つやの消え方を見てから本番に入ります。
塗り重ねまでの待ち時間

下地処理が終わったあとで、もうひとつ間違えやすいところがあります。次を塗るまでに待つ時間です。 下塗りから上塗りまでも、上塗りの1回目から2回目までも、同じ考え方で決まります。
乾く時間と塗り重ねてよい時間は別のもの
カンペハピオの非鉄金属用密着スプレーは、20℃で約20分で乾くと案内しています。ただし同じ欄に、塗り重ねる時は2時間以上と書かれています。
触って乾いていても、中はまだ固まっていません。20分で上塗りすると、下が動いたまま上が固まります。
冬は待ち時間が倍以上になる
同じ製品で、冬期は約40分で乾き、塗り重ねは4時間以上とされています。気温が下がると倍になります。
屋外のサッシや物干しは、日陰だと気温より低いことがあります。表示の時間は、長いほうに合わせてください。
待ち時間は製品ごとに確かめる
ここまでの数字は、カンペハピオの非鉄金属用密着スプレーのものです。製品が変われば時間も変わります。 主なものを並べます。
| 製品 | 乾燥時間 | 塗り重ねまで |
|---|---|---|
| カンペハピオ 非鉄金属用密着スプレー(下塗り) | 20℃で約20分 冬期 約40分 | 2時間以上 冬期 4時間以上 |
| アサヒペン メタルプライマー スプレー(下塗り) | 夏期 15分から20分 冬期 30分から40分 | 表示なし |
| アサヒペン メタルプライマー 刷毛塗り(下塗り) | 夏期 30分から1時間 冬期 1時間から2時間 | 夏期 2時間以上 冬期 3時間以上 |
| カンペハピオ 油性アルミ用 刷毛塗り(上塗り) | 20℃で約30分 冬期 約2時間 | 2時間以上 冬期 6時間以上 |
乾燥時間だけ見ても15分から2時間まで幅があります。使う製品の数字を、作業の前に確かめてください。 乾き方の考え方そのものは塗装のムラと垂れは直せるでくわしく説明しています。
アルミを塗るときのよくある質問

作業の前によく出てくる疑問をまとめました。
アルミ用の塗料ならそのまま塗れますか
塗れないことがあります。カンペハピオの油性アルミ用は、商品説明書にこう書いています。
アルミ建材に直接塗る場合、本品の付着性を向上させるため、「油性アルミ用下塗り剤」を下塗りしてください。
カンペハピオ 油性アルミ用 商品説明書
同じ説明書には「アルミサッシは、表面が劣化していない場合には下塗り剤の塗装は不要です」ともあります。ただし同社のよくある質問では、サッシでも下塗り剤を使った方が「素材と塗料の密着が良く、耐久性が高まります」と答えています。劣化しているか迷ったら、下塗り剤を使ってください。
そもそも「アルミ用」はアルミ専用という意味ではありません。 同じ説明書の用途欄には、ステンレスやメッキ、屋内外の鉄部や木部も並んでいます。アルミにも使える、という意味です。
判断できるのは商品説明書だけです。缶の外からは読めないことが多いので、買う前ならメーカーのサイトで説明書のPDFを開いてください。 説明書のどこを読めばよいかはアルミ用塗料の選び方|缶の2か所を読むにまとめています。
足付けをしないとどうなりますか
塗った直後は問題なく見えます。差が出るのは数か月後です。 爪が当たった場所や、雨がかかる場所から浮いてきます。
浮いた塗膜は、指でつまむと面で持ち上がります。こうなると上から塗り直しても同じことが起きるので、いったん剥がすことになります。
白い粉が付いているときはどうしますか
アルミが腐食して出た白サビです。粉の上に塗ると、粉ごと剥がれます。 足付けの前に落としてください。
落とす道具と番手、どこまで落とせばよいかはアルミもサビる|白サビと腐食の落とし方でくわしく説明しています。
電動サンダーは買ったほうがよいですか
サッシ1本や物干し1台なら手で足ります。アルミは鉄より軟らかいので、つやを消すだけなら力も要りません。
電動工具が要る場面の見分け方はサビ落としに電動工具は必要かにまとめています。
プライマーは刷毛で塗れますか
製品によります。スプレーのものと、刷毛で塗れるものがあります。缶の表示で確かめてください。
どちらの場合も薄く1回で足ります。 プライマーは厚く塗るほど効くものではありません。
アルミの自転車や脚立も同じですか
下地処理の考え方は同じです。ただし力がかかる場所や、手で握る場所は塗膜が傷みやすいことを見込んでください。
脚立のように体重がかかるものは、可動部と足元を塗らないでおくのが無難です。
工場ではどんな前処理をしていますか
私の現場は、この記事と同じで足付けと脱脂とプライマーです。家庭でできることと変わりません。
なお建材メーカーの工場では、クロメート処理という薬品を使った前処理も行われています。日本アルミニウム協会も、カラーアルミの前処理としてクロム酸クロメートやりん酸クロメートを挙げています。これは家庭では扱えないので、その代わりが足付けと密着プライマーだと考えてください。
まとめ

アルミに塗料が食い付かないのは、表面の膜がほかのものと結び付きにくいからです。さびに強い理由と同じなので、なくすことはできません。
できるのは、食い付く場所をこちらで作ることです。やることは3つだけで、工場でも家庭でも変わりません。
- アルミの表面には酸化の膜があり、塗料が食い付かない
- サッシなどの建材はアルマイトで膜を厚くしてある
- やることは足付け、脱脂、密着プライマーの3つ
- 順番を変えない。脱脂は足付けのあと
- 番手は缶の指定が優先。なければ素地は120番から150番、アルマイトの上は320番から
- 迷ったら細かい番手から試す
- 「アルミ用」と書かれた塗料でも、下塗りが要ることがある
- 乾く時間と塗り重ねてよい時間は別のもの

膜があるから付かない、と分かれば納得です。まず240番で試します。

それでいいです。つやが消えたら十分なので、削りすぎないでくださいね。
サッシを塗る具体的な手順はアルミサッシ塗装の8つの手順を、塗る前に守る場所は塗装の養生で仕上がりが決まるを、道具の全体像は塗装の下地処理の7つ道具とむだのない予算をあわせてご覧ください。

