塗り終わって、少し離れて見たときに気づきます。光の向きを変えると塗った跡が縞になって見える。下のほうに、涙のような垂れが1本。塗っている最中は、どちらもほとんど見えません。
やり直すしかないと思う前に、確かめてほしいことがあります。直せるかどうかは、上手か下手かではなく乾き具合で決まります。 同じムラでも、5分後と翌日ではやることがまったく違います。
- 乾いたら縞模様が浮き出てきた
- 垂れを見つけたが、触ってよいのか分からない
- 塗った面を指でなでるとざらざらする
- 塗り重ねればムラは消えるのか知りたい
- 全部やり直すべきか判断できない

乾いたら縞が出てきて。もう一度塗れば消えますか。

消えることもあります。まず、どのくらい乾いているかを見てください。
私は工場で機械部品の塗装をして10年になります。失敗しない職人はいません。違うのは、気づいたときに何をするかです。この記事では、ムラ・垂れ・ざらざらの3つについて、乾く前と乾いたあとの直し方をお伝えします。
塗装の失敗は乾き具合で直し方が変わる

ムラも垂れもざらざらも、直し方は同じ問いから始まります。いま、塗った膜はどのくらい乾いているか。ここを間違えると、直したつもりが傷を広げます。
乾く前ならほとんど直せる
塗料がまだ動く状態なら、刷毛だけで直せます。 新しい塗料も、ヤスリも要りません。
ただし時間との勝負です。気温にもよりますが、動かせる時間は数分から十数分ほどしかありません。見つけたらすぐ手を動かしてください。
乾いたあとは削ってから塗る
固まった膜の上に塗料を重ねても、下の形はそのまま残ります。 厚いところは厚いまま、出っぱりは出っぱったままです。
乾いてしまったら、いったん削って平らにしてから塗り直します。手間は増えますが、やることは決まっているので迷いません。
この記事では「削る」と「研ぐ」を使い分けています。 どちらも紙やすりを使いますが、目的も力の入れ方も違います。
| 比べる点 | 削る | 研ぐ |
|---|---|---|
| 何のために | 出っぱりを落として平らにする | 面を整えて次の塗料をのせやすくする |
| どこを | 垂れや粒がある一点だけ | その面の全体 |
| 番手の目安 | 240番くらい | 320番くらい |
| 持ち方 | 当て木に巻いて使う | 手のひらで軽く持つ |
| 力 | 出っぱりが消えるまで | つやが消える程度 |
当て木は、消しゴムや小さな木片で構いません。平らなものに紙やすりを巻くだけで、削った面が平らになります。 番手の考え方は塗装の下地処理の7つ道具とむだのない予算にまとめています。
「乾いた」には2つの意味がある
この記事でいちばんお伝えしたいところです。缶に書かれている乾燥時間と、塗り重ねてよい時間は別のものです。
乾燥時間は、塗料を軽くさわって手につかなくなるまでの時間。塗り重ねる場合は先に塗った塗料が中までしっかりと乾くまで待つ必要があります。
アサヒペン よくある質問集
つまり表面は乾いているのに、中はまだ柔らかい時間があります。この状態がいちばんやっかいです。刷毛でならしても膜は動かず、それでいて押せば跡が残ります。

| 乾き具合 | 触ったときの様子 | やること |
|---|---|---|
| 塗りたて | 指に塗料が付く | 刷毛だけで直す |
| 表面だけ乾いた | 付かないが、押すと跡が残る | 触らずに待つ |
| 中まで乾いた | 押しても跡が残らない | 削ってから塗る |
確かめ方は指です。アサヒペンは重ね塗りの目安として「指で押してみて指紋の付かないこと」を挙げています。ただし塗った面をそのまま押すと跡が残るので、裏側や端など、目立たない場所で試してください。
塗装のムラの直し方

ムラの正体は膜の厚さの差です。厚いところと薄いところで光の返り方が変わるので、縞や斑に見えます。色が違うわけではありません。
乾く前は塗料を足さずに刷毛でならす
ムラを見つけると塗料を足したくなりますが、足すと厚い側がさらに厚くなります。 やることは逆です。
塗料を付けていない刷毛で、厚いほうから薄いほうへ軽く引きます。 力は入れません。刷毛の重さだけで十分です。余った塗料が薄いところへ移り、厚さがそろいます。
引く向きは一方向にしてください。往復させると、折り返したところに新しい跡が残ります。
乾いたあとは軽く研いでもう1回薄く塗る
中まで乾いてから手をつけます。カンペハピオは塗り重ねる前にサンドペーパーの320番で研磨し、表面を滑らかにすることを案内しています。研ぎカスは布で拭き取ってから塗ります。
研ぐ目的は平らにすることで、塗膜を落とすことではありません。つやが消える程度で止めてください。 下地が見えるまで削ると、その部分だけ吸い込みが変わって、また色が違って見えます。
そのうえで、薄くもう1回塗ります。アサヒペンも薄く塗って2回から3回に分けて塗り重ねるほうがきれいに仕上がると案内しています。1回で隠そうとすると、今度は垂れます。
色が違うムラは混ぜ直して塗り重ねる
厚さではなく、色そのものが違って見えるムラもあります。こちらは刷毛の動かし方では直りません。
アサヒペンは「顔料が沈殿したまま塗り始めると、仕上がりにムラができます」と書いています。缶の底に色の成分が沈んだまま塗ると、塗り始めと塗り終わりで色が変わります。
これは刷毛でならしても消えません。缶をよく混ぜ直してから、上に塗り重ねます。

塗装の垂れの直し方

垂れは、塗料が自分の重さで流れた跡です。厚く塗ったところにだけ出ます。 縦の面、角、へこんだところに出やすくなります。
乾く前は刷毛で吸い取ってから広げる
順番が大事です。いきなり刷毛で広げると、垂れた分の塗料がそのまま横に移り、幅の広い厚みに変わります。
広げる前に、垂れている塗料そのものを減らします。塗料を付けていない刷毛の先を、垂れのいちばん下に軽く当てて吸い取ってください。 刷毛に塗料が移ったら、布で拭ってから次に進みます。
量が減ってから、上下に軽く引いて周りとなじませます。
乾いたあとは出っぱりを削って平らにする
乾いた垂れは、ただの出っぱりです。周りと同じ高さになるまで削ります。320番のサンドペーパーで、少しずつ落としてください。
目で見ても高さは分かりません。指の腹でなでて、段差が分からなくなったら止めます。 削りすぎると下地が出て、塗り直しの範囲が広がります。
直したあとは量を減らして塗り重ねる
吸い取っても削っても、そこだけ塗料が薄くなっています。仕上げに塗り重ねてください。
このとき、周りと同じ調子で塗ると同じ場所でまた垂れます。 理由は塗った量ではなく場所です。垂れるのは、縦の面、板の下のふち、角やへこみのように、塗料が流れて溜まる場所です。 直しても、その条件は変わりません。
もうひとつ、1か所だけ塗り直すときは刷毛を往復させて厚くしがちです。 「ここだけしっかり」と思うほど厚くなります。垂れた場所は、周りより少ない量で1回だけ引いてください。
- 一度垂れた場所は、次に塗る量を減らす
- 刷毛に含ませる量は場面で変える。広い面は多めに、細かい場所や縦の面は少なめに
- 含ませたあとは、缶のふちやバケットのネットで余分を落とす
- 1回で仕上げようとせず、薄く2回に分ける
なお、メーカーは刷毛に含ませる量の目安として毛先から3分の2ほどを案内しています。細かい場所ではこれより控えめにしたほうが扱いやすくなります。刷毛の動かし方そのものはペンキの塗り方とプロの刷毛づかい4つの動きにまとめています。

塗装のざらざらは毛とゴミが原因

塗った面を指でなでると、細かい粒が引っかかる。触って分かるざらつきの正体は、刷毛の抜け毛、空気中のホコリ、乾いた塗料の粒のどれかです。
乾く前は先の細いもので取り除く
ピンセットか、つまようじの先で拾い上げます。指でつまむと、周りの膜まで動きます。
取ったあとには小さなへこみが残ります。塗料を付けていない刷毛で、1回だけ軽く引いてならしてください。 何度も触ると、へこみより跡のほうが目立ちます。
乾いたあとは粒ごと削って平らにする
320番のサンドペーパーで、指でなでても引っかからなくなるまで削ります。粒だけを狙わず、その周りごと平らにするときれいに収まります。
削ったあとの粉は必ず落としてください。カンペハピオも研ぎカスを布(ウエス)で充分に拭き取ることを案内しています。粉が残ったまま塗ると、また同じざらつきになります。
ざらざらは塗る前に減らせる
3つの原因のうち、2つは塗る前に減らせます。
| 原因 | 塗る前にできること |
|---|---|
| 刷毛の抜け毛 | 新品は揉みほぐして、抜けかけた毛を落とす |
| 乾いた塗料の粒 | 缶から直接塗らず、別の容器に移す |
| 空気中のホコリ | 風の強い日を避ける。屋内なら塗る前に床を拭く |
新しい刷毛について、カンペハピオは「使用する前に良く揉みほぐし、抜けかかった毛を取り除きます」と案内しています。缶の口についた塗料も、乾いて固まると面に落ちます。
ペンキの塗り直しに進む見極め

部分だけ直すか、上から塗り直すか。判断の基準は面積ではありません。 数えられるかどうかです。

数えられる失敗は部分だけ直す
垂れが3本、ざらつきが2か所。指をさして数えられるなら、その場所だけ削って塗れば足ります。
直した部分は、乾くと周りよりわずかにつやが違って見えることがあります。気になるときは、その面だけ最後に薄くもう1回塗り重ねると均一になります。
面で出ている失敗は上から塗り直す
ムラが面全体に広がっている場合、部分だけ直すと直した跡が新しいムラになります。 全体に薄く1回塗り重ねるほうが早く、仕上がりもそろいます。
このとき、全部剥がす必要はありません。削るのは出っぱりだけで、あとは軽く研いで塗り重ねます。
下地が傷んでいる失敗は塗装では直らない
塗膜が浮いている、押すと崩れる、穴が開いている。これは塗り方の失敗ではなく、下の素材の問題です。上から塗っても、いずれ同じところから剥がれます。
この見分け方はDIY塗装をやめるべき5つの状態と対処法でくわしく説明しています。
塗装の失敗のよくある質問

直している最中によく出てくる疑問をまとめました。
ムラは乾けば消えますか
消えません。むしろ乾くほどはっきりします。塗っている最中は表面が濡れて光っているので、厚さの差が見えにくいだけです。
塗り終わったら、乾く前に一度離れて、光の向きを変えて見てください。 このときに見つければ刷毛だけで直せます。
塗り重ねれば何でも隠せますか
隠せるのは色の差だけです。高さの差は、何回塗り重ねても残ります。
垂れやざらつきのように形のある失敗は、削らないかぎり消えません。
削るときの番手はどれを使いますか
塗った面を整えるなら320番前後です。カンペハピオが塗り重ね前の研磨に案内している番手で、塗膜を落としすぎずに平らにできます。
粗い番手を使うと早く削れますが、傷が残って次の塗装に出ます。塗料や製品の説明書に番手の指定があれば、そちらを優先してください。
直した部分だけ色が違って見えます
削ったところは吸い込みが変わるので、同じ塗料でも見え方が変わります。その面の端から端まで、薄く1回塗り重ねると収まります。
途中で止めると、止めたところに線が残ります。塗り継ぐなら角や継ぎ目で区切ってください。
何回まで塗り重ねてよいですか
回数の上限は缶の表示で決まります。多くの家庭用塗料は2回塗りを前提にしています。
ただし厚く塗り重ねるほど乾きにくく、ひび割れの元になります。 回数を増やすより、1回を薄くするほうが確実です。
寒い日に塗ったらムラになりました
気温が低いと塗料が伸びにくく、厚さがそろいません。アサヒペンは水性塗料を5℃以下で塗ると簡単にはがれるとし、湿度65%以内・気温15℃から20℃の晴れた日をすすめています。
はがれが出ていなければ、暖かい日に研いで塗り重ねれば直ります。
まとめ

失敗そのものより、気づいたときの乾き具合のほうが大事です。塗り終わったら片づける前に、光の向きを変えて一度見てください。 その1分で、翌日の削る作業がなくなります。
そして、表面が乾いて中がまだ柔らかい時間には触らないこと。待てば直せるものを、自分で壊してしまうのがいちばんもったいない失敗です。
- 直せるかは乾き具合で決まる
- 乾燥時間と塗り重ね時間は別のもの
- 表面だけ乾いた時間は触らずに待つ
- 乾く前のムラは塗料を足さずに刷毛でならす
- 乾く前の垂れは吸い取ってから広げる
- 乾いたあとは320番で削ってから薄く塗る
- 高さの差は塗り重ねても消えない
- 数えられる失敗は部分直し、面で出たら上から1回

乾きかけのときに触っていました。あれが失敗の元だったんですね。

待てば直せますよ。塗り終わったら、光の向きを変えて一度見てください。
失敗を減らす塗り方そのものはペンキの塗り方とプロの刷毛づかい4つの動きを、塗らない場所の守り方は塗装の養生で仕上がりが決まるを、手や床に付いた塗料の落とし方はペンキの落とし方と乾く前にすることをあわせてご覧ください。

