塗り終わったあと、缶の底に半分ほど塗料が残っている。使い終わった刷毛と、色のついた布と、空になった缶もある。燃えるゴミの袋に入れていいのか分からず、物置の隅に置いたままになっていませんか。
結論からお伝えします。ペンキは固めれば、多くの自治体で燃えるゴミに出せます。液体のままでは出せません。そして、捨て方が分かれる条件は「水性か油性か」と「残っている量」の2つだけです。
- 余った塗料を何年も置いたままにしている
- 燃えるゴミに出していいのか分からない
- 缶の出し方が分からない
- 刷毛を洗った水を流していいのか不安
- 捨てるのにお金がかかるのか知りたい

塗り終わったのはいいんですけど、残った塗料をどうすればいいのか分からなくて。

固めれば燃えるゴミです。ただし、油性はひと手間いります。順番にお話しします。
私は工場で機械部品の塗装をして10年になります。毎日塗料を使う仕事なので、後始末も毎日です。この記事では、水性と油性の分かれ道を先にお伝えしたうえで、それぞれの捨て方を手順で解説します。あわせて、塗料を拭いた布から火が出ることがあるという、あまり知られていない話もお伝えします。
ペンキは液体のままでは捨てられない

まず、やってはいけないことをはっきりさせます。液体のまま捨てると、自分が困るだけでなく、ほかの人にも迷惑がかかります。理由を3つお伝えします。
収集車の中で漏れて広がる
ゴミの収集車は、中でゴミを押しつぶしながら積んでいきます。液体の入った缶や袋は、その圧力で簡単に破れます。
破れれば、車の中いっぱいに塗料が広がります。乾いてしまえば、収集車の内側から落とすのは簡単ではありません。これが、多くの自治体が「液体のまま出さないでください」と書いている理由です。
排水に流すと配管の中で固まる
いちばんやってしまいがちなのが、流しやベランダの排水口に流すことです。これは水性でもしてはいけません。
塗料は、水が抜けて固まる性質を持っています。排水管の中でもそれは起きます。細い管の内側に少しずつ積もり、あるとき流れなくなります。詰まる場所は自分の家の管なので、直すのも自分です。
油性はさらに問題があります。うすめ液の成分が下水に入ると、水をきれいにする施設の働きを乱します。水性も油性も、排水に流さない。ここは例外なしと覚えてください。
中身が残った缶は缶ゴミに出せない
空き缶として出せるのは、中が空で乾いている缶だけです。底に塗料が残っていれば、それは中身の入った容器として扱われます。
つまり、缶を捨てるにも、まず中身を片づける必要があります。缶の出し方は後半でお伝えします。
水性と油性で捨て方が分かれる

この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。捨て方は何種類もあるように見えますが、決める条件は2つだけです。順番に見ていけば迷いません。

缶の表示で水性か油性かを見分ける
缶の表面か裏面に、必ず書いてあります。「水性」「水性塗料」と書いてあれば水性です。「油性」「合成樹脂調合ペイント」「ラッカー」と書いてあれば油性です。
表示が消えて読めないときは、うすめ方で見分けられます。水で薄めると書いてあれば水性、専用のうすめ液が要るものは油性です。それも分からないときは、油性として扱ってください。厳しいほうに合わせておけば間違いになりません。
残っている量をおおまかに測る
正確に量る必要はありません。分かれ目はおよそ400ミリリットル、コップ2杯ぶんです。固化剤メーカーが、一度に燃えるゴミへ出す目安として示している量です。
- 缶を振って音がしない程度 → ごく少量
- 0.7リットル缶の底から2センチほど → 200ミリリットル前後
- 0.7リットル缶の半分 → 350ミリリットル前後
- 1.6リットル缶が半分以上 → 400ミリリットルを超える
2つを組み合わせて捨て方を決める
表示と量が分かれば、進む道は決まります。4通りしかありません。
| 塗料の種類 | 残っている量 | どうするか |
|---|---|---|
| 水性 | 400mL以下 | 固めて燃えるゴミ |
| 油性 | 400mL以下 | 乾かして湿らせて燃えるゴミ |
| 水性 | 400mLを超える | 何回かに分けるか、自治体に出し方を聞く |
| 油性 | 400mLを超える | 買った店か自治体に引き取り先を聞く |
ここで正直にお伝えしておきます。燃えるゴミに出せるかどうかは、最後は自治体の決まりで変わります。 多くの自治体は固めたものを受け入れますが、少数ながら受け入れないところもあります。
調べ方は簡単です。お住まいの市区町村名と「塗料 ゴミ」で検索すれば、分別のページが出てきます。先に調べておけば、固めたあとで困りません。
水性ペンキを固める3つの手順

水性の少量なら、家にあるものだけで片づきます。特別な道具は要りません。

手順1 新聞紙に薄く広げる
新聞紙を何枚か重ねて敷き、その上に塗料を出します。刷毛かへらで、できるだけ薄く広げてください。
厚く盛ると、表面だけ乾いて中が液体のまま残ります。薄く広げるほど早く乾きます。量が多いときは、新聞紙を増やして何回かに分けてください。
手順2 からからになるまで乾かす
風通しのよい場所に置いて乾かします。薄く広げた水性なら、半日から1日です。
乾いたかどうかは、指で押して確かめます。押してへこんだり、つやが残っていたりすればまだです。爪で軽くひっかいて、粉のように欠けるようになれば乾いています。
手順3 燃えるゴミの袋に入れる
乾いた新聞紙ごと丸めて、燃えるゴミの袋に入れます。塗料だけを剥がす必要はありません。
量が多くて新聞紙では手間がかかるときは、塗料の固化剤が売っています。粉を混ぜるだけで固まり、500円から1,000円ほどです。急ぐときや量が多いときは、こちらのほうが楽です。
油性ペンキは乾かしてから湿らせる

油性は水性と手順が違います。乾かしたあとに、もう一度水で湿らせるという、一見おかしな手順が入ります。理由は次の章でお伝えします。
手順1 戸外で乾かす
新聞紙に薄く広げるところまでは水性と同じです。ただし、必ず屋外でおこなってください。油性のうすめ液は蒸発するとき強いにおいを出し、吸い続けると気分が悪くなります。
火の気のない場所を選びます。乾くまでは水性より長く、1日から2日みてください。
手順2 水で湿らせる
乾いた新聞紙に、水をかけて湿らせます。びしょびしょにする必要はなく、全体が濡れていれば十分です。
これは塗料メーカーが公式に案内している手順です。乾いたように見えても、油性は内部で反応が続いていることがあります。 水を含ませておけば、その熱がこもりません。
手順3 空気を抜いて密封する
湿らせた新聞紙をビニール袋に入れ、できるだけ空気を抜いて口を縛ります。空気が入っていなければ、反応そのものが進みません。
そのまま燃えるゴミに出します。ゴミ出しの日の朝に出すようにして、家の中に何日も置かないようにしてください。
塗料を拭いた布が燃えることがある

ここからは、DIYの記事ではあまり書かれていない話です。前の章で「水で湿らせる」と書いた理由がここにあります。
塗料を拭き取った布を丸めて置いておくと、火の気がなくても燃え出すことがあります。消防本部や塗料メーカーが注意を呼びかけている、実際に起きている事故です。
国の機関である製品評価技術基盤機構が、実際の事故を記録しています。事故情報特記ニュース第81号に載っている5件を、分かりやすく書き直したものが下の表です。
| いつ | どんな置き方をしたか | どうなったか |
|---|---|---|
| 2004年11月 | 外壁を塗ったあと、拭いた布をゴミ袋に入れて置いた | 壁が焦げた |
| 2004年11月 | 拭いたタオルを袋に入れ、段ボール箱ごと台所に置いた | 約24時間後に出火し台所が焼けた |
| 2005年1月 | 床にワックスをかけ、モップと雑巾をポリ袋に入れた | 袋から煙が出た |
| 2007年5月 | 塗料のしみた布を倉庫に置いた | 倉庫の一部が焼けた |
| 2007年5月 | 拭いた布を麻袋に入れて現場に置いた | 発火して現場が焼けた |
読んでいただくと分かるとおり、塗っている最中に起きた事故は1件もありません。 すべて後始末のあとです。2番目の例では、片づけてから火が出るまで約24時間ありました。3番目はワックスがけなので、塗装に限った話でもありません。
自治体の消防本部も、同じことを住民に呼びかけています。福岡県の苅田町消防本部は、注意を呼びかけるページでこう書いています。
管内で塗料を拭き取った布から自然発火したと思われる火災が発生しました。
苅田町消防本部「ご注意ください!塗料を拭き取った布が自然発火」
研究所の実験ではなく、ふつうの町で起きた火事です。消防が住民に向けてわざわざ知らせるということは、それだけ起こりうるということです。

油性の一部だけで起きる
すべての塗料で起きるわけではありません。油を原料にして、空気と反応しながら固まる種類の塗料で起きます。缶には「合成樹脂調合ペイント」「アルキッド樹脂」などと書かれています。
日本ペイントは、この性質を持つ塗料でだけ起きると公式に説明しています。水性塗料では起きません。ただし、缶の表示が読めないときは油性として扱ってください。
丸めて置くと熱がこもる
仕組みはこうです。布にしみた油が空気と反応して、わずかに熱を出します。1枚を広げてあれば、その熱は逃げていきます。
ところが丸めたり、袋にまとめて押し込んだりすると、内側の熱が逃げ場を失って、少しずつ温度が上がります。この上がり方はゆっくりで、数時間で済むこともあれば、数日かかることもあります。
つまり、塗り終わった直後は何ともないのに、翌日や数日後に燃え出すことがあるということです。物置や車の中に放り込んでおくのがいちばん危険です。
- 丸めて置く → 内側の熱が逃げられない
- 何枚も積み重ねる → 逃げ場がさらに減る
- 袋や箱に押し込む → 中が高温になる
水に沈めると反応が止まる
裏を返せば、空気に触れなければ熱は出ません。使い終わった布は、水を張った容器に沈めてふたをします。 それだけで反応が止まります。
- 水を張った容器に沈める → 空気に触れない
- ふたをして水を減らさない → 途中で乾くと元に戻る
- 捨てるときも湿らせたまま袋に入れる → 反応が進まない
広げて完全に乾かしてしまう方法もあります。ただし、1枚ずつ離して広げないと意味がありません。手間を考えると、水に沈めるほうが確実です。
缶とうすめ液と洗った水の捨て方

塗料本体が片づいても、捨てるものがまだ残っています。缶とうすめ液と、刷毛を洗った水の3つです。

空になった缶
空になった缶は、内側に塗料が薄く残っています。紙や布で拭き取ってから、ふたを開けたまま乾かしてください。 乾いてから出します。
出し方は缶の大きさで変わります。小さい缶は金属ゴミ、大きい缶は粗大ゴミになる自治体があります。ふたは外して、缶と一緒に出すのが一般的です。
余ったうすめ液
うすめ液も排水に流せません。新聞紙や古布に吸わせて、屋外で乾かします。 塗料本体と同じ考え方です。
乾かしたあとは、水で湿らせて袋に入れてください。うすめ液を吸った布も、油性塗料を拭いた布と同じ扱いにします。
刷毛を洗った水
水性の刷毛を洗った水は、最初の1回だけ新聞紙に吸わせてから、残りを流してください。塗料が濃く出るのは最初だけです。
油性の刷毛をうすめ液で洗った液は、流してはいけません。容器に入れて一晩置くと、塗料が底に沈みます。上の澄んだ液は次の洗いに使え、底に沈んだものは新聞紙に吸わせて捨てます。刷毛の洗い方は初心者向け刷毛の選び方と失敗しない5つの基準で解説しています。
ペンキの捨て方のよくある質問

後始末のときに出てくる疑問をまとめました。
水性なら排水に流してよいか
いけません。水性は水で薄められますが、水に溶けているわけではありません。水が抜ければ管の中で固まります。
刷毛を洗った薄い水を最後に流すのは、多くの自治体が認めています。濃い塗料そのものは流さない、と覚えてください。
何年も前の塗料はまだ使えるか
ふたを開けて、かき混ぜてみてください。全体が一様に混ざれば使えます。固まりが浮いていたり、糸を引いたりするものは使えません。
未開封でも、缶の表示にある期限を過ぎたものは仕上がりが落ちます。塗り直す手間を考えると、数百円を惜しまずに買い直したほうが早いことが多いです。
固化剤はどこで買えるか
ホームセンターの塗料売り場と、通販で買えます。500円から1,000円ほどで、水性にも油性にも使える製品があります。
使い方は、塗料に粉を入れてかき混ぜるだけです。新聞紙が汚れるのが嫌なときや、量が多いときに向きます。 少量なら新聞紙で十分です。
マンションで屋外に置けないときはどうするか
水性なら、換気扇の下か窓を開けた部屋で乾かせます。においはほとんどありません。
油性は室内で乾かさないでください。ベランダに新聞紙を広げ、風で飛ばないように重しを置きます。それもできない場合は、無理をせず買った店に相談してください。
スプレー缶はどう捨てるか
スプレー缶は中にガスが入っているため、扱いが別です。必ず中身を出し切ってから出してください。
出し切る作業は、火の気のない屋外でおこないます。穴を開けるかどうかは自治体で決まりが分かれるので、必ず分別のページを見てください。ここは自治体差が大きいところです。
業者に頼むといくらかかるか
不用品回収の業者に頼むと、数千円からが目安です。缶1つ2つのためなら、自分で固めたほうが安く済みます。
頼む価値があるのは、引っ越しや片づけで、塗料以外にも処分するものがまとまってあるときです。塗料だけのために呼ぶ場面はほとんどありません。
塗料が手や服についたらどう落とすか
水性なら、乾く前ならぬるま湯と石けんで落ちます。乾いてしまったら、皮膚は時間をおけば自然に剥がれます。服や床も含めた落とし方はペンキの落とし方と乾く前にすることにまとめています。
油性は、乾く前でも水では落ちません。手はハンドクリームか食用油でなじませてから石けんで洗うと落ちやすくなります。 服はほぼ落ちないので、塗るときは汚れてよい服にしてください。
まとめ

ペンキの捨て方は、覚えることが少ない作業です。缶の表示を見て、量を見る。それだけで進む道が決まります。
そして、ひとつだけ覚えて帰っていただきたいことがあります。油性の塗料を拭いた布を、丸めて置かない。塗料本体より、こちらのほうが危険です。
- 液体のままでは出せない
- 水性も油性も排水に流さない
- 分かれ道は「種類」と「量」の2つ
- 目安は400ミリリットル
- 水性は薄く広げて乾かすだけ
- 油性は乾かしたあと水で湿らせる
- 拭いた布は水に沈めてふたをする
- 缶は拭いて乾かしてから出す
- 最後は自治体の分別ページで確かめる

物置に置きっぱなしだった缶、今度の休みに片づけます。

缶は休みの日で間に合います。でも布だけは、今日のうちに水に沈めておいてくださいね。
次に塗るときに塗料を余らせないコツは、サビ止め塗料の選び方と初心者が迷う4つの分かれ道の「量と値段の目安」で解説しています。塗り方そのものはペンキの塗り方とプロの刷毛づかい4つの動きを、道具の選び方は塗装の下地処理の7つ道具とむだのない予算をあわせてご覧ください。

