ホームセンターの塗装コーナーに行くと、刷毛だけで何十種類も並んでいます。値段も100円から1000円以上までばらばらで、どれを選べばいいのか分からなくなった経験はありませんか。
- 売り場での刷毛選びの迷い
- 安い刷毛と高い刷毛の違い
- 塗っている途中の毛抜け
- 幅や毛の種類の見分け方
- 買ったあとの手入れ方法

刷毛なんてどれも同じに見えます。安いもので済ませたらだめでしょうか。

そこが落とし穴です。仕上がりの差は腕より道具で決まります。見るべき点は5つだけなので、順番に説明しますね。
私は工場で製品の塗装をして10年になります。毎日いくつもの刷毛を使い分けていますが、初心者の方が押さえるべき基準はたった5つです。この記事では、その5つの基準と、値段の差がどこに出るか、買ったあとに長持ちさせる手入れまでお伝えします。読み終えるころには、売り場で迷わず手に取れるようになります。
刷毛選びで失敗する理由

刷毛は、同じメーカーの同じ幅でも、値段が倍ほど違うことがあります。値段の差は、毛の材料や毛先の作りの差です。まずは、値段で何が変わるのかを知っておきましょう。
値段の差は、毛の材料と毛先の作りの差
アサヒペンの、水性と油性のどちらにも使える刷毛を2つ比べます。どちらも50mm幅です。
| 製品 | 値段(50mm) | 毛の材料 | 毛の長さ | メーカーの説明 |
|---|---|---|---|---|
| お得用多用途用ハケ | 281円 | 山羊毛と化学繊維を混ぜた毛 | 37mm | 水性・油性塗料兼用 |
| 多用途用ハケ | 611円 | 化学繊維100% | 42mm | 極細毛先で、ハケ目が目立ちにくい |
値段が上がると、毛の材料や長さ、毛先の作りが変わります。刷毛目が目立ちにくいとうたっているのは、値段の高いほうです。 値段はお店によって違うので、ほかの通販やホームセンターでは、表と同じとは限りません。
100均の刷毛は、私はほとんど使ったことがないので、ほかの刷毛と比べられません。ただ、刷毛も値段なりの作りだと考えています。仕上がりや使いやすさを大事にするなら、100均ではない刷毛をおすすめします。
抜けた毛が仕上がりに残る影響
抜けた毛が塗面に残ると、乾いたあとに取り除くのは非常に厄介です。乾燥した塗膜に毛が埋まってしまうため、指でつまんでも取れません。
取り除くには、その部分をサンドペーパーで削り、もう一度塗り直す必要があります。たった1本の毛のために、乾燥待ちを含めて半日が無駄になります。毛が残らないようにする下準備は、よくある質問で説明しています。
初心者ほど道具に頼るべき理由
経験を積んだ職人は、多少扱いにくい刷毛でも力加減で補えます。しかし初心者にはその引き出しがありません。だからこそ、道具の性能に助けてもらう必要があります。
- 塗料を一定量に保つ含み
- 力を抜いても伸びる腰の強さ
- 刷毛跡の残りにくい毛先
良い刷毛は、塗料を適量ふくんで均一に放してくれます。つまり、塗る人が意識しなくても勝手にムラが出にくくなるということです。腕を上げるより、道具を変えるほうがずっと早く上達します。
刷毛の選び方5つの基準

ここからが本題です。売り場には数十種類の刷毛が並んでいますが、初心者が見るべき点は5つに絞れます。毛の種類、幅、塗料との相性、刷毛の形、そして値段です。この順番で確認していけば、自分に必要な1本が自然と決まります。逆に言えば、それ以外の要素は慣れてから考えれば十分です。
基準1 毛の種類
初心者が選ぶべきは化繊、つまりポリエステルやPBTといった化学繊維の刷毛です。理由は、水性にも油性にも使えて、水を吸っても腰が落ちないからです。
| 毛の種類 | 初心者への向き | 特徴 |
|---|---|---|
| 化繊(ポリエステル・PBT) | ★★★★★ | 水性も油性も使える万能型 |
| 豚毛 | ★★★☆☆ | 油性向き 水性では腰が落ちる |
| 馬毛・山羊毛 | ★★☆☆☆ | やわらかくニス向き |
| 混毛 | ★★★☆☆ | 用途が分かってから選ぶ |
獣毛の刷毛は塗料の含みが良く、プロも好んで使います。ただし豚毛を水性塗料で使うと、毛が水分を吸ってふにゃふにゃになり、まっすぐ塗れません。最初の1本としてはすすめられません。
基準2 刷毛の幅
幅は塗る面積で決まります。広い面に細い刷毛を使うと塗り継ぎの跡が増え、逆に狭い場所に太い刷毛を使うとはみ出します。
| 幅 | 向いている場所 |
|---|---|
| 20〜30mm | 枠 窓のさん 細かい溝 |
| 50mm | ドア 家具 棚板 |
| 70mm以上 | 壁 塀 広い平面 |

最初にそろえるなら、50mmと30mmの2本をおすすめします。この2本があれば、家庭のDIYで出てくる場所はほとんどカバーできます。玄関ドアの塗装も、この組み合わせで対応できます。
基準3 塗料との相性
刷毛のパッケージには、対応する塗料が必ず書かれています。ここを見落とすと、性能を発揮できません。
- 水性用と書かれた化繊の刷毛
- 油性用と書かれた豚毛や化繊
- 兼用と書かれた万能タイプ
- ニス用のやわらかい刷毛
迷ったら「水性・油性兼用」を選んでください。1本で両方に使えるため、次にどんな塗料を買っても無駄になりません。
なお、鉄やアルミなどの金属を塗る場合は、上塗り塗料の前にサビ止めや密着剤が要るかを、缶の指示で確かめてください。手順は郵便受け塗装のDIY手順とサビ止めのコツ3選で、どの缶を選ぶかはサビ止め塗料の選び方と初心者が迷う4つの分かれ道で解説しています。
基準4 刷毛の形
刷毛は、柄の形でも分かれます。柄がまっすぐな「平刷毛(ひらばけ)」と、柄が斜めについた「筋かい刷毛(すじかいばけ)」です。アサヒペンは、次のように説明しています。
すじかいバケはコーナーなど狭い場所を塗るのに、平バケは広い場所を効率よく塗るのに適しています。
アサヒペン「塗装用具とその使い方」
| 形 | 柄 | 向いている所 |
|---|---|---|
| 平刷毛 | まっすぐ | ドアの面、棚板など広い所 |
| 筋かい刷毛 | 斜め | 隅、枠、溝など狭い所 |
基準2で50mmと30mmの2本をすすめました。細いほうの30mmを筋かい刷毛にすると、隅や枠が塗りやすくなります。 私も仕事で刷毛を選ぶときは、形のほかに、毛の長さと柄の持ちやすさを見ます。売り場では、刷毛を手に持って、柄が手になじむかを確かめてください。
基準5 値段の見方
刷毛の値段は、用途や種類で変わるので、「この値段なら正解」とは言えません。最初の章の表のように、同じメーカーの50mmでも281円と611円の刷毛があります。値段だけで決めず、ここまでの4つの基準に合う刷毛の中から選んでください。 迷ったら、メーカーが刷毛目の出にくさなど、仕上がりの良さをうたっている刷毛を選ぶと安心です。

5つも覚えられる自信がありません。売り場で全部確認しないとだめでしょうか。

いえ、最初は毛の種類と幅の2つだけで十分です。水性と油性の両方に使える化学繊維の刷毛を、塗る所に合う幅で選べば、大きく外れません。
用途別の刷毛の使い分け

基準が分かったら、次は場面ごとの使い分けです。同じ塗装作業でも、広い面と細かい部分では最適な道具が変わります。プロの現場では1つの作業で3本以上の刷毛を持ち替えることも珍しくありません。家庭のDIYでそこまでは不要ですが、2本を使い分けるだけで仕上がりは見違えます。100均が活きる場面もあわせて紹介します。
広い面を塗るとき
壁や塀のような広い面は、刷毛よりローラーのほうが早く仕上がります。ただしローラーは端や角に届かないため、刷毛との併用が前提です。

手順としては、先に刷毛で端や隅を塗っておき、中央の広い部分をローラーで一気に塗ります。この順番を守ると、塗り継ぎの跡がほとんど目立ちません。逆にすると、ローラーの跡の上から刷毛を入れることになり、質感の差が出ます。 ローラーの幅や毛の長さの選び方は、【職人が教える】ペンキのローラーの使い方|6つの手順とムラ対策にまとめています。
細かい部分を塗るとき
溝や窓のさん、金具まわりには20mmから30mmの細い刷毛を使います。太い刷毛で無理に塗ると、周囲にはみ出して修正の手間が増えます。
- ドア枠と壁の境目
- 蝶番のまわり
- 格子や装飾の溝
- 家具の脚の付け根
細い刷毛は塗料の含みが少ないため、こまめに足しながら塗ります。一度に塗ろうとせず、少しずつ進めるのが仕上がりを整えるコツです。
格子の多い門扉や、細い丸パイプでできたスチールラックは、この細かい部分だけでできているような対象です。塗り方は門扉の塗装をDIYする7つの手順と道具の選び方とスチールラック塗装を剥がれにくくする7つの手順でくわしく解説しています。
100均でも問題ない場面
ここまで100均の刷毛をすすめてきませんでしたが、適した場面もあります。それは、洗って再利用するつもりがない作業です。
- 接着剤やボンドの塗布
- 洗いにくい防腐剤や防錆剤
- 下塗り材の一度きりの使用
- 塗り方を試す練習用
これらは洗浄の手間やうすめ液の費用を考えると、使い捨てたほうが安く済みます。仕上げの塗装には向きませんが、道具として完全に無価値というわけではありません。用途を選べば十分に役立ちます。

えっ、100均の刷毛にも出番があるんですね。全部だめかと思っていました。

接着剤や防腐剤のように、洗うのが大変なものにこそ向いています。1本置いておくと重宝しますよ。
刷毛を長持ちさせる手入れ

良い刷毛を買っても、使ったあとに放置すれば一度で使えなくなります。逆に手入れさえきちんとすれば、化繊の刷毛は10回以上くり返し使えます。手入れといっても難しいことはなく、使い終わったらすぐ洗う、それだけです。ここでは水性と油性それぞれの洗い方と、保管のコツをお伝えします。
水性塗料のあとの洗い方
水性塗料は水で落とせます。ただし乾く前に洗うことが絶対条件です。
- 新聞紙に押し当てて余分な塗料を落とす
- ぬるま湯で根元から洗い流す
- 指で毛をほぐしながら色を落とす
- 水が透明になるまでくり返す
- 軽く絞って形を整える

洗い残しがあると、根元に塗料が固まって毛が広がります。根元まで指を入れて洗うのが、長持ちさせる最大のコツです。
油性塗料のあとの洗い方
油性塗料は水では落ちません。ペイントうすめ液を使います。
塗料の缶とは別の容器にうすめ液を少量入れ、刷毛を浸してもみ洗いします。このとき、うすめ液を2回に分けて使うと節約できます。1回目で大半の塗料を落とし、汚れた液を捨ててから、きれいな液で仕上げ洗いをする方法です。作業は換気のできる屋外で行ってください。
- 屋外または換気のできる場所
- 火気のない環境
- うすめ液は2回に分けて使用
- 使用後の液は新聞紙に吸わせて処分
新聞紙に吸わせたあとの扱いと、余ったうすめ液そのものの捨て方はペンキの捨て方と水性と油性の分かれ道で解説しています。
保管するときの注意点
洗ったあとの置き方で、次に使えるかどうかが決まります。毛先を下にして立てると、毛が曲がったまま固まります。
| 保管方法 | 評価 |
|---|---|
| 柄の穴に紐を通して吊るす | ★★★★★ |
| 毛先を浮かせて寝かせる | ★★★★☆ |
| 毛先を下にして立てる | ★☆☆☆☆ |

多くの刷毛の柄には穴が開いています。これは吊るして保管するためのものです。紐を通して引っかけておけば、毛先が変形せず、次に使うときもまっすぐ塗れます。
刷毛選びのよくある質問

最後に、刷毛について実際によく聞かれる質問にお答えします。売り場で迷いやすい点や、使い始めてから気づく疑問を集めました。買う前に目を通しておけば、当日の作業がぐっとスムーズに進みます。特に新品の下準備は見落とされがちなので、必ず確認しておいてください。
刷毛とローラーはどう使い分けるか
広い平面はローラー、端や溝は刷毛と覚えてください。ローラーは速さが利点ですが、角には届きません。実際の作業では両方を使い、先に刷毛で際を塗ってからローラーで面を仕上げます。
刷毛は何回くらい使えるか
化繊の刷毛なら、きちんと洗えば10回以上使えます。交換の合図は毛先が開いてきたときです。毛が広がると塗料が均一に出なくなり、筋が残るようになります。根元に塗料が固まった場合も交換どきです。
新品の刷毛はそのまま使ってよいか
私が職場で使っている国産の刷毛は、新品でも、使っている途中でも、毛が抜けたことはありません。ただ、刷毛によっては、抜けかけた毛が残っていることがあります。アサヒペンも、新しいハケを使う前には、よくしごいて抜け毛を取っておくよう書いています。使う前に手で毛をよくしごいて、抜ける毛がないか確かめてから塗り始めてください。
塗った面に毛が残ったらどうするか
塗った面に毛が残ってしまったときの対処です。塗料が乾く前なら、ピンセットや刷毛の先でそっと拾えます。気づいたらすぐ取り除いてください。乾いたあとは、毛の周りの塗膜を軽く研磨してから塗り直します。
固まった刷毛は元に戻せるか
順番に試せば戻せることがあります。いきなり削るのは最終手段です。
- つけ置きする 水性はぬるま湯と中性洗剤 油性はうすめ液に毛先だけ数時間から一晩
- やわらかくなったら目の細かい櫛や爪で根元からとかす
- 戻らなければ毛先を数ミリ切るか軽く研磨して形を整える
いきなりサンドペーパーを当てると毛先が不ぞろいになり、次に使ったときムラや毛抜けの原因になります。表面だけ削っても根元の固まりは取れませんので、まずはつけ置きから試してください。
ホームセンターで買うべきか
最初の1本は実店舗をおすすめします。手に持って、柄の持ちやすさや刷毛の大きさを確かめられるからです。慣れてきたら、種類が豊富でレビューも読めるネット通販が便利になります。塗料をどこで買うかは、【比べて選ぶ】ペンキはどこで買う?ホームセンター・通販・100均で比べています。
まとめ

刷毛選びは、5つの基準さえ押さえれば難しくありません。値段の差は、毛の材料や毛先の作りの差です。最初の1本は、値段だけで決めず、5つの基準で選んでください。
- 最初の1本は化繊の兼用タイプ
- 50mmと30mmの2本で大半に対応
- 細いほうは筋かい刷毛にすると隅が塗りやすい
- 値段だけで決めず、5つの基準で選ぶ
- 100均の刷毛は、使い捨てる作業に使う
- 使用後すぐ洗って吊るして保管

これなら売り場で迷わず選べそうです。さっそく買いに行ってきます。

その意気です。いい1本を選べば、塗る作業そのものが楽しくなりますよ。
次にホームセンターへ行くときは、この5つを思い出しながら売り場を見てください。今まで同じに見えていた刷毛が、まったく違うものに見えてくるはずです。
その前に、塗る対象が本当に塗れる状態かも確かめておいてください。DIY塗装をやめるべき5つの状態と対処法で、道具をそろえる前に見るべき点をまとめています。刷毛のほかに何が要るかは、塗装の下地処理の7つ道具とむだのない予算でそろえる順に紹介しています。売り場では電動工具も目に入りますが、こちらは買う前に条件を確かめてください。サビ落としに電動工具が必要な3つの条件で、必要な場面とそうでない場面を分けて解説しています。
道具がそろったら、実際に塗ってみましょう。玄関ドア塗装のかんたんDIY手順とムラ防止のコツ3選では、ここで選んだ刷毛を使って失敗しない塗り方を解説しています。あわせて読めば、次の休日から自信を持って作業を始められます。手の動かし方そのものはペンキの塗り方とプロの刷毛づかい4つの動きにまとめています。

