ホームセンターの塗料売り場に立つと、同じ色の缶が2種類並んでいます。片方に「水性」、もう片方に「油性」。値段もあまり変わりません。においが少ないと書いてある水性を手に取って、それでいいのか少し迷う。よくある場面だと思います。
先にお伝えします。屋外の鉄に向くのは油性、室内の家具に向くのは水性です。においだけで選ぶと、屋外では早く色あせたり剥がれたりすることがあります。
- 水性と油性で何が変わるのか分からない
- においが少ない水性を選んでよいのか不安
- 屋外に水性を塗っても大丈夫か知りたい
- 前に塗った塗料の上から重ねてよいか分からない
- 缶の表示のどこを見ればよいか分からない

においが少ないほうがいいと思って水性を選んだんですが、これでよかったんでしょうか。

どこに何を塗るかによります。室内ならそれで正解ですよ。屋外の鉄だと話が変わります。
私は工場で機械部品の塗装をして10年になります。水性も油性も毎日使い分けています。この記事では、2つの違いを3つに絞ってお伝えしたうえで、どこに何を塗るなら、どちらを選ぶのかを表にします。缶の細かい説明を読み込む必要はありません。
水性ペンキと油性ペンキの3つの違い

細かい違いを挙げればきりがありませんが、読者が知っておくべきことは3つだけです。ここが分かれば、売り場で迷う時間が減ります。

薄めるものが違う
水性は水で薄めます。油性はペイントうすめ液という専用の液で薄めます。呼び名の由来はここです。
- 水性 → 水
- 油性 → ペイントうすめ液
- ラッカーと書かれた油性 → ラッカーうすめ液
缶に書かれている液の名前をそのまま買ってください。違う液を使うと、塗料が固まったり、うまく溶けなかったりします。うすめ液は別売りで、よく使う400mLの缶で500円前後です。油性を選ぶと、缶のほかにこれも必要になります。塗料メーカーは、うすめ液の用途として薄めることと、使ったあとの刷毛やローラーを洗うことの両方を挙げています。
買い忘れて困るのは、塗り終わったあとです。油性の付いた刷毛は水では洗えず、その日のうちに毛が固まって使えなくなります。 床や手に付いた塗料も、水では落ちません。
乾き方が違う
水性は、塗った面から水が蒸発して固まります。油性は、溶剤が飛んで固まります。塗料メーカーの日本ペイントが、この違いを両者の出発点として説明しています。
この差が、次に出てくるにおいと耐久性の差につながります。飛んでいくものが水か溶剤か。それだけの違いに見えて、できあがる塗膜の性質が変わります。
片づけ方が違う
水性の刷毛は水道の水で洗えます。油性の刷毛はうすめ液で洗います。作業が終わったあとの手間は、ここではっきり分かれます。服や手に付いたときの落とし方も同じ考え方で、ペンキの落とし方と乾く前にすることにまとめています。
油性はうすめ液を使うぶん、洗う場所も選びます。屋外か、窓を開けられる場所が必要です。洗ったあとのうすめ液も、排水に流せません。 片づけまで含めた進め方はペンキの捨て方と水性と油性の分かれ道で解説しています。
鉄と屋外には油性ペンキが向く

この記事でいちばんお伝えしたい章です。外壁塗装の世界では「水性と油性の差はほとんどない」と言われるようになりました。ただしそれは、業者が使う塗料の話です。
ホームセンターで買える家庭用の缶については、塗料メーカー自身が別のことを書いています。順番に見ていきます。
日光と雨に強いのは油性
日本ペイントグループのDIY向けサイトは、屋外に水性を塗ることもできると書いたうえで、こう続けています。
ただやはり耐久性が高いのは油性塗料ですので、特に直射日光が当たる面や、下地が鉄部でさびが発生しやすそうなところは油性塗料がいいでしょう。
ニッペホームオンライン「水性塗料と油性塗料の違い」
理由として挙げているのは、含まれる樹脂が丈夫な塗膜を作ることと、細部への入り込みがよいことの2つです。
南向きや西向きの門扉、一日じゅう日が当たる物置の壁は、ここでいう直射日光が当たる面にそのまま当てはまります。
細かいすき間に入るのは油性
油性が向くもう1つの理由が、いま出てきた細部への入り込みのよさです。これは鉄にとって、耐久性と同じくらい大事な性質になります。
鉄がサビ始めるのは、塗膜の切れ目からです。ねじの際、角の折り返し、溶接のあと。こうした細かい場所に塗料が入るかどうかで、サビの出る時期が変わります。
このブログで扱ってきた門扉、郵便受け、物置、スチールラックは、すべて鉄です。屋外にあるものは、迷ったら油性を選んでください。 鉄の下塗りについてはサビ止め塗料の選び方と初心者が迷う4つの分かれ道で解説しています。
素材を選ばないのは油性
日本ペイントグループのサイトは、油性について素材を選ばずに塗装できるとも書いています。相手の材質を問わず食い付きやすい、という意味です。屋外にはいろいろな材質が混ざるので、これは大きな利点になります。
ただし、これは何にでも下塗りなしで塗れるという意味ではありません。 下塗りが要る場面は決まっていて、そこは水性でも油性でも変わりません。
- 鉄 → ふつうはサビ止めの下塗りが要る
- アルミ ステンレス → ふつうは密着プライマーが要る
- 「サビの上から塗れる」と書かれた製品 → サビ止めを省ける
- 対応素材に「アルミ」と書かれた製品 → 密着プライマーを省ける
- 見るのは缶の対応素材の欄 → 水性か油性かでは決まらない
アルミやステンレスは表面がつるつるで、塗料がつかまる場所がありません。油性にしたから密着プライマーを省ける、というわけではありません。 密着プライマーのメーカーも、この2つを最も向いた素材として挙げています。
一方で、対応素材にアルミやステンレスを挙げている塗料もあります。下塗りを省けるかどうかは、水性か油性かではなく、その缶に書いてあるかどうかで決まります。 アルミに塗るときの缶の読み方はアルミ用塗料の選び方|缶の2か所を読むで説明しています。
アルミサッシの塗り方はアルミサッシ塗装の8つの手順と塗ってはいけない5か所で、鉄のサビ止めはサビ止め塗料の選び方と初心者が迷う4つの分かれ道で解説しています。
室内と集合住宅には水性ペンキが向く

ここまで読むと油性がよく思えるかもしれませんが、場所が変われば答えも変わります。室内では水性のほうが確実です。 理由を3つお伝えします。
においが少ないのは水性
水から出るのは水蒸気なので、においがほとんどありません。油性は溶剤が飛ぶため、はっきりしたにおいが出ます。
このにおいは、塗っている最中だけでなく、乾くまで続きます。半日から1日、部屋に残ると考えてください。集合住宅では、隣や上下の階まで届くことがあります。
道具を水で洗えるのは水性
刷毛を流しで洗えます。うすめ液を買う必要も、洗う場所を探す必要もありません。
ただし濃い塗料をそのまま流してはいけません。 最初のひと洗いは新聞紙に吸わせてから、残りを流してください。刷毛の扱いは初心者向け刷毛の選び方と失敗しない5つの基準にまとめています。
子どもの部屋にも使えるのは水性
水性塗料の中には、室内の空気の基準を満たした製品があります。F☆☆☆☆といった星印で表示されているものもあります。すべての缶に付いているわけではないので、表示があるかどうかを見てください。
子ども部屋の家具や、閉め切りがちな洗面所を塗るなら水性を選んでください。換気を十分にできない場所で油性を使うのは避けます。カラーボックスの塗り方はカラーボックス塗装の7つの手順とはじかない下地作りで解説しています。
水性と油性を選ぶ3つの分かれ道

ここまでの話を、売り場で使える形にまとめます。見るのは3つだけです。

屋外か室内かで決める
屋外なら油性、室内なら水性。これが出発点です。日光と雨に当たる場所ほど、油性の強さが効いてきます。
屋外でも、玄関の内側やベランダの屋根の下など、日が直接当たらない場所なら水性でも足ります。 完全な線引きではなく、目安と考えてください。
塗る相手の材質で決める
鉄なら油性が有利です。アルミやステンレスは、水性か油性かより先に、缶の「用途」にアルミやステンレスが入っているかを見ます。入っていなければ、密着プライマーが先です。木は水性でも油性でも塗れます。
材質が分からないときは、磁石を当ててみてください。くっつけば鉄の可能性が高く、くっつかなければアルミの可能性があります。
ただし磁石だけでは決まりません。 ステンレスには磁石が付く種類と付かない種類があります。はっきりしないときは、缶の対応素材の欄を見て、目立たない場所で試し塗りをしてください。
においを出せるかで決める
最後にこれを確かめます。屋外でも、隣家との距離が近ければ油性のにおいは届きます。 洗濯物が干してある時間帯は避けてください。
| 塗るもの | 場所 | 選ぶのは |
|---|---|---|
| 門扉 物置 郵便受け(鉄) | 屋外 | 油性 |
| 玄関ドア(鉄) | 屋外 | 長持ちは油性 においを出せないなら水性 |
| アルミサッシ | 屋外 | 上塗りの缶にアルミがなければ、密着プライマーが先 |
| スチールラック | 室内 | 水性 |
| カラーボックス 木の家具 | 室内 | 水性 |
表で種類を決めたら、最後に缶の対応素材と、屋内用か屋外用かの表示を見てください。同じ水性でも、屋外に使えるものと室内専用のものがあります。そこが合っていないと、種類が正しくても長持ちしません。
水性と油性に共通する3つの決まり

どちらを選んでも変わらない決まりがあります。ここを外すと、正しく選んでも仕上がりません。

5度以下では塗らない
アサヒペンは、水性塗料は5℃以下で塗ると簡単にはがれると書いています。気温5℃以下を避けるという目安は、多くのメーカーの製品に共通して見られます。
ただし、塗ってよい温度と湿度は製品ごとに違います。下に挙げるのはアサヒペンが理想としている範囲です。実際に塗る前に、缶の表示を見てください。
- 気温15℃から20℃ → アサヒペンが理想としている範囲
- 湿度65%以内 → これを超えると乾きが遅くなる
- 晴れていて風が弱い → ほこりが付きにくい
- 朝から作業を始められる → 日暮れまでに乾く
気温は空気の温度ではなく、塗る面の温度で考えてください。日陰の鉄は、気温より低いことがあります。
重ねるときは下の塗料を確かめる
前に塗った塗料と違う種類を重ねるときは、そのまま塗らないでください。条件は、どちらが下になるかで違います。 サンデーペイントは次のように案内しています。
| 下にある塗料 | 上に塗る塗料 | 必要なこと |
|---|---|---|
| 油性 | 水性 | 240番ほどのサンドペーパーで表面を荒らす |
| 水性 | 油性 | 水性が十分に乾いた膜になっていればよい |
つまり、油性の上に水性を塗るほうが剥がれやすいということです。水性が下になるほうが、条件はゆるくなります。どちらの場合でも共通するのは、下の塗料が乾いていることです。
迷ったときは、どちらの場合でも足付けをして構いません。ただし削りすぎると下の塗膜まで取れて、素地が出てしまいます。 つやが消える程度で止めてください。前に何を塗ったか分からない場合は、目立たない場所で試し塗りをしてください。塗料が縮む、はじく、下の色が溶け出すようなら、その組み合わせは使えません。
水性と油性を混ぜて使わない
2つを1つの容器で混ぜることはできません。分離して、塗れる状態になりません。
同じ理由で、水性を塗った刷毛を洗わずに油性へ使うこともできません。 種類を変えるときは、刷毛を洗って乾かすか、別の刷毛を用意してください。
水性と油性のよくある質問

売り場と作業中によく出てくる疑問をまとめました。
缶を見て水性か油性かどう見分けるか
缶の表か裏に必ず書いてあります。「水性」「水性塗料」なら水性です。「油性」「合成樹脂調合ペイント」「ラッカー」なら油性です。
もう1つ確実なのがうすめ方の欄です。「水でうすめる」と書いてあれば水性、「ペイントうすめ液」と書いてあれば油性です。商品名だけでは分かりません。
水性を屋外に塗ってもよいか
塗れます。乾いてしまえば雨で流れることはありません。缶に「屋外用」または「屋内外用」と書かれているものを選んでください。 屋内外用の水性塗料には、用途に門扉や鉄柵を挙げているものもあります。
そのうえで、鉄で日当たりが強い場所なら油性のほうが長く持ちます。塗れるかどうかと、長く持つかどうかは別の話です。
値段はどちらが高いか
缶そのものの値段は大きく変わりません。差が出るのは、うすめ液を別に買う分だけです。どちらも同じくらいの容量がそろっています。
| 買うもの | 売っている容量 | 門扉1枚を塗るなら |
|---|---|---|
| 油性塗料(鉄部用) | 0.2L 0.7L 1.6L 3L | 0.7L |
| ペイントうすめ液 | 100mL 250mL 400mL 1L 1.8L 4L | 400mL |
塗料0.7Lに対してうすめ液400mLと聞くと多く感じるかもしれません。ところが薄めるのに使うのはごくわずかで、ほとんどは刷毛と手と床の後始末で消えます。
1回きりの作業なら、水性のほうが総額は安く済みます。何度も塗るなら、うすめ液は次の作業にも使えるので差は縮まります。 4Lの得用サイズなら4,000円ほどで、何年も持ちます。
乾くのが速いのはどちらか
製品によって差が大きいため、缶の表示を見てください。同じ日に2回塗るつもりなら、塗り重ねまでの時間を先に確かめます。
どちらにしても、表面が乾いたことと中まで固まったことは別です。手で触れるようになっても、物を乗せるのは翌日以降にしてください。
においはどれくらいで消えるか
油性のにおいが残る時間は、塗った量と換気のしかたで大きく変わります。 窓を開けて風を通せる部屋なら数時間で薄くなりますが、締め切った部屋では1日以上残ることもあります。
水性はほとんど気になりません。ただし無臭ではないので、においに敏感な方がいる家では、水性でも換気をしてください。
余った塗料はどちらが保存しやすいか
どちらも、ふちの塗料をふき取ってふたを閉め、直射日光の当たらない涼しい場所に立てて置きます。
水性で気をつけるのは凍る場所に置かないことです。一度凍らせると、溶かしても元に戻りません。捨て方はペンキの捨て方と水性と油性の分かれ道で解説しています。
初めての1本はどちらを買うべきか
室内の小さなものから始めるなら水性です。失敗しても水で拭き取れますし、片づけも流しで済みます。
屋外の鉄から始めるなら油性です。うすめ液と、換気のできる洗い場を先に用意してから買ってください。 買ってから気づくと、その日は作業できません。
まとめ

水性と油性は、優劣ではなく向き不向きです。どちらかが優れているのではなく、置かれる場所が答えを決めます。
においが少ないという理由だけで水性を選ぶと、屋外の鉄では早く傷みます。逆に室内で油性を選ぶと、家族に迷惑がかかります。塗る場所と材質を先に決めてから、缶を手に取ってください。
- 違うのは薄めるもの 乾き方 片づけ方の3つ
- 屋外の鉄は油性
- 室内と集合住宅は水性
- アルミとステンレスは「用途」を確かめ、なければ密着プライマーが先
- 材質は磁石で分かる
- 5度以下と湿度85%以上では塗らない
- 違う種類を重ねるときは足付けをする
- 2つを混ぜて使わない
- 水性は凍らせると使えなくなる

室内の棚だったので、水性のままでよかったんですね。

それで正解です。次に門扉を塗るときは油性にしてくださいね。
選んだあとの塗り方はペンキの塗り方とプロの刷毛づかい4つの動きを、道具の準備は塗装の下地処理の7つ道具とむだのない予算をあわせてご覧ください。

