子ども部屋のカラーボックスを、白に塗り替えたい。ホームセンターで水性塗料を買ってきて、刷毛を入れた。ところが塗料が表面で玉になって、うまく広がらない。乾いてから爪を立てたら、ぺろりとめくれた。そんな経験はありませんか。
腕の問題ではありません。カラーボックスの表面は、塗料が乗るようにできていないからです。しかも、よく言われる「サンドペーパーをかける」を強くやると、今度は別の失敗が起きます。
- 塗料が玉になってはじく
- 乾いたあとに爪で剥がれる
- ヤスリをどこまでかけるか
- 下塗りが要るのかの迷い
- 子ども部屋でも塗れるのか

塗ったそばから塗料がはじくんです。刷毛が悪いんでしょうか。

刷毛ではなく、塗る相手のせいです。カラーボックスの表面は木ではありませんよ。
私は工場で機械部品の塗装をして10年になります。現場で相手にするのは、塗料が定着しにくい面ばかりです。メッキ、樹脂、そして塗装済みの金属。定着しない面を定着させるのが下地処理で、カラーボックスもまったく同じ考え方で塗れます。この記事では、塗装がはじく原因と、下地処理を含めた7つの手順をお伝えします。
カラーボックスの塗装がはじく原因

先に原因をはっきりさせます。ここを知らないまま手を動かすと、下地処理のどこに力を入れればよいのかが分かりません。カラーボックスは見た目こそ木の家具ですが、表面に木の面が出ているものはほとんどありません。多くは、木の粉を固めた板に、木目を印刷した紙や樹脂のシートを貼り、その上につやを出すコートをかけてあります。刷毛が触れているのは、このコートです。原因を3つに分けてお伝えします。

| 層 | 中身 | 塗装との関係 |
|---|---|---|
| いちばん上 | つやを出すコート | 塗料をはじく |
| その下 | 木目を印刷した紙 | 削ると破れる |
| 中身 | 木の粉を固めた板 | 水を吸って膨らむ |
表面のコートが塗料をはじいている
印刷した紙は、そのままでは汚れや水に弱すぎます。そこで表面に樹脂のコートがかけてあります。これが、濡れた布で拭いても平気な理由です。
ところが、この性質は塗装にとっては邪魔になります。水をはじく面の上では、水性塗料も広がりません。塗っている最中に塗料が玉になって広がらないのは、これが原因です。面が汚れているからではなく、はじくようにできています。
つるつるで塗料が食い付いていない
2つ目は、乾いたあとに現れる原因です。コートの面はつるつるしていて、塗料が引っかかる凹凸がありません。塗膜は面に乗っているだけの状態になります。
塗れたのに、乾いてから爪を立てるとめくれるのは、これが原因です。素材は違っても、つるつるした面は塗料が定着しません。同じことが金属でも起きていて、スチールラックのメッキと、窓のアルミサッシ塗装の8つの手順と塗らない5つの場所がその代表です。考え方はスチールラック塗装を剥がれにくくする7つの手順で解説しています。
手あかと脂が残っている
3つ目は、面の一部だけに起きる原因です。カラーボックスは毎日手が触れる家具です。棚の縁、扉の角、上に物を置き下ろしする場所には、手の脂が付いています。
- 棚板の手前の縁 → 出し入れのたびに指が触れる
- 天板の上 → 物を置き下ろしする
- 本体の角 → 移動させるときにつかむ
- 背板の下のほう → 掃除のときに手を付く
全体はうまく塗れたのに、一部だけ玉になる。そういう塗り上がりになったら、そこに脂が残っています。水拭きだけでは落ちません。手順の中で、脱脂の工程を別に設けているのはこのためです。
塗る前に確かめる3つのこと

原因が分かったところで、手を動かす前の確認です。カラーボックスはメーカーや値段で作りが違い、同じ1台の中でも部分によって材料が変わります。3分で終わる確認をしておくと、途中で「ここだけ様子が違う」と困らずに済みます。
天板と背板の材料を確かめる
同じ1台でも、厚みのある天板や棚板と、薄いベニヤのような背板では材料が違います。背板は特に薄く、水分を含むと反ります。材質は、商品に貼られたシールか説明書に書かれています。プリント紙化粧とあれば表面は紙で、削りすぎると破れます。
背板は、外せるなら外して別に塗ってください。外せない場合は、塗料を含ませすぎず、薄く手早く塗ることを意識します。たっぷり塗ると、乾く前に反りが出ます。
目立たない場所で試し塗りする
本体の裏側や、床に接する底面など、完成後に見えない場所を選んでください。そこに10円玉くらいの大きさで塗料を置いて、様子を見ます。
| 試し塗りの結果 | 意味すること | 次にすること |
|---|---|---|
| 玉になって広がらない | コートがはじいている | 下地処理から始める |
| 広がるが乾くと爪で剥がれる | 食い付いていない | 密着プライマーを使う |
| 塗料が沈んで色が濃くなる | 紙が破れて中が出ている | その部分は削らない |
試し塗りは、道具をそろえたあとに行います。本番と同じ塗料、同じ刷毛で試さないと、判断の材料になりません。
塗らないほうがよい状態を知る
次のような場合は、塗っても長持ちしません。手をかけるより、買い替えたほうが結果が良くなります。
- 水がかかって板がふくらんでいる
- 角が欠けて中の粉がこぼれている
- 棚板がたわんで戻らない
- 組み立てのねじがきかなくなっている
カラーボックスは、安いものだと1000円台から売られています。塗料と道具をそろえる費用のほうが高くつく場合があります。買い替えの値段を調べてから決めてください。判断のしかたはDIY塗装をやめるべき5つの状態と対処法にまとめています。
下地処理と塗装の7つの手順

ここからが本番です。手を動かす時間は2時間ほど、乾燥を待つ時間を含めると1日から2日を見てください。急いで塗り重ねると、あとから剥がれます。順番には理由があるので、飛ばさずに進めてください。

手順1 分解して部品を外す
組み立てたまま塗ると、角の内側に刷毛が入りません。ねじを外して、板を1枚ずつにしてください。背板も外します。
外したねじは、袋に入れて本体に貼っておきます。ねじ穴には塗料を入れないでください。穴の内側に塗料がたまると、組み直すときにねじが入りにくくなります。マスキングテープを小さく切って、穴をふさいでおくと確実です。
手順2 洗って乾かす
手あかとほこりを落とします。中性洗剤を薄めた水に雑巾をひたし、固くしぼって拭いてください。水をかけて洗ってはいけません。切り口から水が入ると、中の板がふくらみます。
拭いたあとは、乾いた布で水気を取り、30分ほど置きます。ただし湿度の高い日や冬場は、もっと時間がかかります。切り口とねじ穴まで乾いているかを手で触って確かめてください。
手順3 ヤスリでつやを消す
240番前後のサンドペーパーを使います。力は入れません。手のひらの重さだけで、面を数回なでる程度です。
ここで力を入れてはいけません。ヤスリの役目は、削り落とすことではなくつやを消すことです。プリント紙で仕上げたものは、粘着力の強いテープでもはがれるほど表面が柔らかい材料です。金属を削るつもりで当てると、簡単に破れます。
- 印刷の紙が破れる
- 下の板がざらざらと出てくる
- 出てきた面が塗料を吸い込む
- そこだけ色が沈んでムラになる

- ちょうどよい → 光の反射が鈍くなり白っぽくなる
- やりすぎ → 印刷の木目が薄くなる
- 完全にやりすぎ → 下の板の粉が出てくる
木目が薄くなり始めたら、そこで止めてください。つやが消えていれば、下地としては十分です。
かけ終わったら、出た粉を乾いた布で拭き取ります。粉が残ったまま塗ると、塗膜の中に粉が閉じ込められて、そこから剥がれます。
なお、密着プライマーにはペーパー研ぎが不要とうたう製品もあります。ただし同じ説明書に、水をはじくコーティングの面は研磨するなどして落とすようにとも書かれています。カラーボックスは、まさに水をはじく面です。数分で終わる作業なので、軽くつやを消しておくほうが確実です。
手順4 脱脂する
ヤスリのあと、もう一度きれいにします。工場でも、塗る直前には必ず脱脂をします。ここを省いた分は、そのまま仕上がりに出ます。
まず、薄めた中性洗剤を含ませて固くしぼった布で拭き、そのあと水拭きで洗剤を落として乾かします。それでも脂が残る場所には脱脂剤を使いますが、先に目立たない場所で試してください。アルコールや溶剤で、印刷の面が白くなったり、色がにじんだりする製品があります。
拭くときは一方向に動かします。往復させると、落とした脂を戻してしまいます。拭いたあとは素手で触らないでください。脱脂に使う道具は塗装の下地処理の7つ道具とむだのない予算で解説しています。
手順5 密着プライマーを塗る
この記事でいちばん大事な工程です。ここを省くと、これまでの作業がほとんど無駄になります。

密着プライマーは、食い付きにくい面と上塗り塗料の間に入って、両方をつなぐ塗料です。ホームセンターではミッチャクロンという商品が広く置かれていて、金属から樹脂、化粧板まで幅広く対応すると表示されています。対応素材に化粧板や樹脂が入っているかを、缶で確かめてください。
アルミの場合の使い方はアルミに塗料が食い付かない理由でくわしく説明しています。
刷毛で塗るなら、塗料を付けたあと缶のふちに押し当てて余分を落とし、薄く1回だけ塗ります。厚塗りはしないでください。くぼみに溜まると、そこが剥がれの起点になります。塗る回数と乾かす時間は製品で違うため、説明書に従ってください。ミッチャクロンマルチの場合、水性の上塗りを重ねるまで気温20度・湿度60パーセントで2時間ほどとされています。
- 溶剤のにおいが強い製品がある → 窓を開けて換気する
- スプレーの製品が多い → 屋外かベランダで塗る
- 気温5度以下や湿度が高い日 → 密着しにくくなる
- 作業中と乾燥中 → 子どもとペットを近づけない
- 溶剤を拭き取った布 → 広げて乾かしてから捨てる
手順6 上塗り1回目
1回で色を決めようとしないでください。薄く塗って乾かし、もう一度薄く塗る。これがムラを減らすいちばん確実な方法です。それでも刷毛の跡が残るときはペンキの塗り方とプロの刷毛づかい4つの動きをご覧ください。
1回目は、色が薄くて下が透けていて構いません。透けている状態が正しい状態です。ここで色を出そうとして塗料を足すと、たれと刷毛あとが残ります。
刷毛は、面の端から端まで一方向に動かします。途中で止めると、そこに跡が残ります。動かし方は初心者向け刷毛の選び方と失敗しない5つの基準で解説しています。
手順7 上塗り2回目
乾燥時間を守ってから2回目に入ります。指で触れて付かなくても、塗膜の内部はまだ固まっていません。缶に書かれた塗り重ね間隔を守ってください。
2回目で色が決まります。1回目と同じように薄く塗ってください。厚く塗っても色は濃くなりません。元の色が濃ければ、3回目が必要になることもあります。
カラーボックス塗装に使う道具

必要なものは多くありません。売り場では似た缶が並びますが、選ぶ基準ははっきりしています。3つに分けてお伝えします。費用は、道具をすべてそろえた場合で3000円から5000円ほどが目安です。
240番前後のサンドペーパー
番号は数字が小さいほど粗く、大きいほど細かくなります。カラーボックスに使うのは240番前後です。
| 番号 | 粗さ | カラーボックスでの向き不向き |
|---|---|---|
| 120番以下 | 粗い | 紙が破れるため使わない |
| 240番前後 | 中くらい | つや消しにちょうどよい |
| 400番以上 | 細かい | つやが落ちるまで時間がかかる |
100円ショップでも売られています。カラーボックス1台なら1枚か2枚で足ります。
カラーボックスに要る密着プライマー
下塗りの中でも、カラーボックスに要るのは密着プライマーです。鉄に使うサビ止め塗料とは役目が違います。
| 塗る相手 | 使う下塗り | ねらい |
|---|---|---|
| カラーボックス | 密着プライマー | 塗料を定着させる |
| 鉄 | サビ止め塗料 | サビを抑える |
| アルミ ステンレス | 密着プライマー | 塗料を定着させる |
下塗りの考え方はサビ止め塗料の選び方と初心者が迷う4つの分かれ道でくわしく解説しています。
室内向けの上塗り塗料
カラーボックスは室内で使うものです。雨に当たらないので、水性で十分に持ちます。子ども部屋では水性を選んでください。油性はにおいが強く、換気しにくい部屋では気分が悪くなることがあります。塗ったあともにおいが残るため、子どもが寝る部屋には向きません。水性と油性の違いは水性ペンキと油性ペンキの違いと初心者の選び方にまとめています。
選ぶときは、缶に「屋内用」または「家具に使える」と書かれているかを見てください。刷毛は、面を塗る30ミリから50ミリのものが1本あれば足ります。
カラーボックス塗装のよくある質問

作業の前後でよく出てくる疑問をまとめました。どれも迷いやすい点です。
ヤスリなしで塗れるか
製品によります。密着プライマーの中には、ペーパー研ぎが不要とうたうものがあります。実際、ミッチャクロンマルチの資料には「ペーパー研ぎが不要(一部を除く)」と書かれています。
ただし、同じ資料の使い方の欄には、水をはじくコーティングの面は研磨するなどして落とすようにとも書かれています。カラーボックスは、まさに水をはじく面です。研磨不要という言葉だけを見て省くと、この条件から外れます。
つやを消す作業は数分で終わります。手のひらの重さでなでるだけなので、迷うなら軽くかけておくほうが確実です。強く削らなければ失敗する要素はありません。
スプレーと刷毛のどちらがよいか
室内で作業するなら刷毛です。スプレーは細かい霧が飛び、床や壁、隣の家具にも付きます。
スプレーを使うなら、屋外かベランダで、風のない日に行ってください。段ボールで囲いを作ると飛び散りが減ります。密着プライマーはスプレーの製品が多いので、プライマーだけ屋外で塗り、乾いてから室内で上塗りするという分け方もできます。
100円ショップのものでも同じか
表面の作りは似ていますが、板が薄く、塗料の水分で反りやすくなります。塗るなら、より薄く手早く塗ってください。
ただし、そもそも本体が安い商品です。道具代のほうが高くつくことがあるので、買い替えと比べてから決めるほうが確実です。
塗ったあといつから物を置けるか
表面が乾いても、塗膜の内部はまだ固まっていません。指で触れて付かなくなるのと、物を置けるのは別です。
目安としては、最後の上塗りから数日置いてください。缶に硬化までの日数が書かれていれば、その表示を優先します。固まりきる前に本や箱を置くと、底の跡が残ります。
費用はいくらかかるか
- 密着プライマー → 1200円ほど
- 室内用の水性塗料 → 1500円ほど
- 刷毛 1本 → 500円ほど
- サンドペーパーと養生材 → 500円ほど
合計で3000円から5000円ほどです。2台目からは塗料が余るため、1台あたりの費用は下がります。
途中で剥がれたらどうするか
剥がれた部分だけを直しても、また同じ場所から剥がれます。原因は下地にあるからです。
めくれた塗膜を、縁が浮かなくなるまで取り除いてください。そのあと、その部分を軽くならして脱脂し、密着プライマーから塗り直します。上塗りだけを重ねても解決しません。
木目を生かした仕上げにできるか
ニスやオイルで木目を濃くするという意味ならできません。表面に見えている木目は印刷された絵で、しみ込む木の繊維がないからです。
一方、いまの木目を残したまま、透明の塗料で保護することはできます。密着プライマーには透明の製品があり、その上に透明の上塗りを重ねる形です。ただし色は変わらないので、見た目を変えたい場合には向きません。
色を変えたいなら、できるのは上から色をかぶせて隠す塗り方です。木目の柄そのものを変えたい場合は、塗装ではなく板やシートを貼る方法になります。
まとめ

カラーボックスの塗装がはじくのは、腕のせいではありません。表面が印刷した紙とコートでできていて、塗料をはじくようにできているからです。つやを消して、密着プライマーでつなぐ。この2つを押さえれば、剥がれにくい仕上がりになります。
- 表面は木ではなく印刷した紙
- コートが水性塗料もはじく
- ヤスリは削らずつやを消すだけ
- 木目が薄くなったら止める
- 密着プライマーは省かない
- 上塗りは薄く2回重ねる
- 室内なので水性を選ぶ

木ではなく紙だったんですね。ヤスリは軽くなでるだけでいいんだ。

そのとおりです。つやが消えてプライマーが入れば、あとは薄く2回。落ち着いて進めれば大丈夫ですよ。
同じ考え方は、メッキやアルミなど他の定着しにくい面にも使えます。金属の場合はスチールラック塗装を剥がれにくくする7つの手順を、下塗りの選び方はサビ止め塗料の選び方と初心者が迷う4つの分かれ道をあわせてご覧ください。

