庭のスチール物置が、白っぽくくすんできた。手で触ると白い粉が付き、扉の下のほうには茶色いサビも出ている。買い替えると数万円かかるので、塗って直せないかと考えている。そんなところではないでしょうか。
物置は塗れます。ただし、これまで扱ってきた郵便受けや門扉とは面積がまるで違います。同じやり方で手を動かすと、下地処理の途中で力尽きます。そして、塗ってはいけない場所がひとつあります。
- 手に付く白い粉の正体
- 広い面をどう下地処理するか
- 屋根まで塗ってよいのかの迷い
- どの下塗りを選べばよいか
- 買い替えとどちらが得か

物置が全体的にくすんできて。触ると手が白くなるんです。

それは古い塗膜が粉になっています。落としてから塗らないと、粉ごと剥がれますよ。
私は工場で機械部品の塗装をして10年になります。広い面を手で塗るときに、どこで手を抜くと失敗するかは体で覚えています。この記事では、物置の塗装が剥がれる原因と、屋根を塗らない理由をお伝えしたうえで、8つの手順を紹介します。あわせて、この記事で初めて電動工具の出番が来ます。
物置の塗装が剥がれる原因

先に原因をはっきりさせます。物置は、買ったときからすでに塗装されている製品です。つまり塗り替えは、新しく塗るのではなく古い塗膜の上に重ねる作業になります。ここが郵便受けや門扉と違うところです。原因を3つに分けてお伝えします。

粉になった塗膜の上から塗っている
手で触ると白い粉が付く。あれは汚れではありません。チョーキングと呼ばれる状態で、塗料に入っている色の粉が、紫外線で表面に浮き出てきたものです。
粉の上に新しい塗料を乗せても、くっつく相手がありません。粉ごと塗膜が剥がれます。物置は一日じゅう日が当たる場所に置かれていることが多く、南側と西側の面ほど強く出ます。
見分け方は簡単です。乾いた手で面をなでて、手のひらが白くなるかを見てください。白くなればチョーキングです。
メッキの面に鉄用のサビ止めを塗っている
2つ目の原因です。物置の板は、ただの鉄板ではありません。鉄板に亜鉛のメッキをして、その上から塗装した鋼板が多く使われています。ガルバリウム鋼板と表示された製品もあります。
| 層 | 中身 | 塗装との関係 |
|---|---|---|
| いちばん上 | メーカーが塗った塗膜 | 粉になると密着しない |
| その下 | 亜鉛やアルミ亜鉛のメッキ | つるつるで食い付かない |
| 中身 | 鉄の板 | むき出しになるとサビる |
古い塗膜が剥げた場所は、メッキの面が出ています。メッキはつるつるしていて、塗料が引っかかりません。鉄用のサビ止めを塗っても定着しないので、メッキに対応した下塗りが必要になります。考え方はスチールラック塗装を剥がれにくくする7つの手順と同じです。
面が広くて下地処理が雑になっている
3つ目は、物置だけに起きる原因です。よくある大きさの物置でも、塗る面は畳にして5枚から10枚分あります。郵便受けの何十倍です。
これを紙やすりだけでやろうとすると、腕が持ちません。途中から力が入らなくなり、後半の面だけ下地処理が浅くなります。そして半年後、その面から先に剥がれます。
ここが、物置で初めて電動工具を検討する理由です。判断の基準はサビ落としに電動工具が必要な3つの条件でお伝えしたとおりで、物置ははっきりその条件に当てはまります。
物置を塗る前に確かめる3つのこと

原因が分かったところで、手を動かす前の確認です。物置は屋外にあり、作業が1日では終わりません。始めてから引き返すのは大変なので、最初に3つだけ見ておいてください。とくに2つ目は、塗るかどうかそのものを左右します。
塗る範囲を先に決める
物置は、壁、扉、屋根、そして基礎に近い足元でできています。このうち屋根は塗りません。理由は次の章でお伝えします。
壁と扉だけでも、庭から見える色はすべて変わります。脚立を使わずに手が届く高さまでと決めてください。塗る量が先に読めますし、無理な姿勢をとらずに済みます。塀ぎわに置いてあって裏に回れない場合は、回れる面だけにしてください。
サビが穴になっていないか確かめる
茶色いサビが出ている場所を、指で軽く押してみてください。へこむ、たわむ、音が変わる。そのどれかがあれば、板が薄くなっています。
- 指で押すとへこむ
- サビを落としている途中で穴が開いた
- 扉が枠に当たって閉まらない
- 基礎が傾いて本体がゆがんでいる
サビが進んだ板は、下地処理の最中に穴が開くことがあります。穴が開いてから迷うより、先に決めておくほうが気持ちが楽です。
判断のしかたはDIY塗装をやめるべき5つの状態と対処法にまとめています。物置は1台で数万円しますが、薄くなった板は、塗っても厚みは戻りません。
2日続けて晴れる日を選ぶ
物置の塗装は1日では終わりません。洗って乾かし、下地処理をして、下塗りと上塗りを重ねます。乾かす時間のほうが、手を動かす時間より長くなります。
途中で雨が降ると、乾ききっていない塗膜が流れます。天気予報で2日続けて晴れる日を選んでください。朝露が残る早朝と、気温が下がる夕方以降は避けます。
物置の屋根を塗らない理由

この記事でいちばんお伝えしたい章です。物置の屋根は、乗ること自体ができないわけではありません。メーカーの案内にも、雪下ろしで屋根に乗る場合の注意が書かれています。ただし、雪下ろしと塗装では条件が違います。理由を3つに分けてお伝えします。

地面からは屋根が見えない
物置の高さが自分の背を超えていると、地面に立ったままでは屋根に手が届きません。そして同じ理由で、立っている目線から屋根はほとんど見えません。
見えない面のために、高いところで作業することになります。地面から目に入るのは、壁と扉です。ここを塗り替えれば、庭から見える物置の色はすべて新しくなります。
なお、背より低い物置なら、地面に立ったまま屋根に手が届きます。その場合はこの話に当てはまりません。足を乗せずに塗れる範囲なら、塗って構いません。
手すりのない場所で足元から目を離す
物置の屋根は、囲いも手すりもない平らな面です。ベランダや階段と違って、とっさにつかまる場所がありません。
そして塗装は、足元ではなく塗っている面を見続ける作業です。塗りムラを探して下を向いているうちに、屋根の端がどこかを見失います。メーカーの案内にも、屋根に乗るときは足元が滑りやすいので十分注意するようにと書かれています。
高さは2メートル前後です。たいした高さではないと感じるかもしれません。ところが落ちる先は、庭のコンクリートや砂利です。
刷毛と缶で両手がふさがる
雪下ろしはスコップ1本で、空いた手で体を支えられます。塗装は違います。片手に刷毛かローラー、もう一方に塗料の缶。バランスを崩したとき、つかむ手がありません。
缶を屋根に置けばよいと思うかもしれません。ところが塗りながら少しずつ移動するので、そのたびに缶も動かすことになります。足元を見ないまま手を伸ばす回数が増えます。
- 壁と扉だけ塗る → 地面から見える面の色がすべて新しくなる
- 屋根は洗うだけにする → 汚れが落ちれば印象は変わる
- 屋根まで塗りたい → 業者に頼む
- 買い替えを検討する → 塗装の費用と比べてから決める
屋根に手を伸ばすために脚立を立てる時点で、DIY塗装をやめるべき5つの状態と対処法で決めた基準に当たります。見えない面のために危ない姿勢をとる必要はありません。
物置塗装の8つの手順

ここからが本番です。手を動かす時間は5時間ほど、乾かす時間を入れると2日を見てください。面が広いので、1面ずつ区切って進めると、どこまで終わったかが分かりやすくなります。順番には理由があるので、飛ばさずに進めてください。

手順1 物置の中の物を出す
物置の中身をすべて出します。塗料のにおいは、中に置いてある物に移ります。扉を開け閉めしながらの作業にもなるので、先に空にしてください。出した物は、塗料がかからない場所へ運びます。
物置のまわりも空けます。壁から1メートルほど下がれる場所があると、塗りムラを見つけやすくなります。
手順2 洗って乾かす
ホースの水とブラシで、全体を洗います。土ぼこり、クモの巣、コケ。屋外にあるものは、思っているより汚れています。
洗剤を使った場合は、水でしっかり流してください。洗剤が残ると、そこから塗料がはじきます。洗ったあとは半日ほど置いて、完全に乾かします。
手順3 チョーキングを落とす
手に白い粉が付かなくなるまで落とします。ナイロンたわしか、目の細かいサンドペーパーでこすってください。
落とし終わったかどうかは、乾いた手でなでて白くならないかで確かめます。ここを残したまま塗ると、これまでの作業が全部むだになります。
手順4 サビとつやを落とす
茶色いサビを落とし、あわせて全体のつやを消します。つるつるの面に細かい傷を付けて、塗料が引っかかるようにする作業で、これを足付けと呼びます。落とし方の選び方は鉄のサビの落とし方と4つの方法の比べ方で解説しています。

- サビが点々としているだけ → 手作業で足りる
- 1面に広がっている → 電動工具を検討する
- 物置全体がくすんでいる → 電動工具のほうが確実
- 使うなら → 回転の遅いサンダー、強く押し付けない
板が薄いので、強く当てると変形します。軽く当てて、面を動かし続けてください。
粉が飛ぶので、防じんマスクと保護メガネを着けてください。終わったら、出た粉を水で流すか、乾いた布で拭き取ります。
手順5 塗らない場所を養生する
物置には、塗らないほうがよい場所がいくつかあります。塗る前に、テープとシートでふさいでください。
| ふさぐ場所 | 塗ると起きること |
|---|---|
| 扉のレールと戸車 | 扉が重くなり動かなくなる |
| 鍵と取っ手の可動部 | 鍵がかかりにくくなる |
| ゴムのパッキン | 硬くなって雨が入る |
| 換気口の穴 | 中が湿気てカビる |
| 本体まわりの地面 | コンクリートに塗料が残る |
地面の養生を忘れがちです。コンクリートに落ちた塗料は、乾くと落ちません。物置の足元に沿って、幅広く敷いておいてください。
手順6 下塗りを塗る
ここを省くと、これまでの作業がほとんどむだになります。物置に使うのは、メッキに対応した下塗りです。
缶には、使える素材の一覧が書かれています。そこに亜鉛メッキ、ガルバリウム、トタンのいずれかが入っているものを選んでください。鉄用としか書かれていないサビ止めでは、メッキの面に定着しません。
下塗りの種類と選び方はサビ止め塗料の選び方と初心者が迷う4つの分かれ道で解説しています。塗る回数と乾かす時間は製品で違うため、缶の表示に従ってください。
手順7 上塗り1回目
1回で色を決めようとしないでください。薄く塗って乾かし、もう一度薄く塗る。これがムラを減らすいちばん確実な方法です。広い面を塗り継ぐときの進め方はペンキの塗り方とプロの刷毛づかい4つの動きをご覧ください。
広い面はローラー、角と扉のふちは刷毛。先に刷毛で細かい場所を済ませてから、ローラーで面を塗ると、境目がなじみます。1回目は下が透けていて構いません。
刷毛の選び方は初心者向け刷毛の選び方と失敗しない5つの基準で解説しています。
手順8 上塗り2回目
乾燥時間を守ってから2回目に入ります。指で触れて付かなくても、塗膜の内部はまだ固まっていません。缶に書かれた塗り重ね間隔を守ってください。
2回目で色が決まります。塗り終わったら、テープは塗膜が完全に乾く前に外してください。乾ききってから外すと、塗膜が一緒に持っていかれます。外したあと、扉が前と同じように動くかを確かめます。
物置塗装に使う道具

郵便受けや門扉とは、そろえるものが変わります。面が広いぶん、手だけでは追いつかない工程が出てくるからです。3つに分けてお伝えします。費用は、道具をすべてそろえた場合で1万円から1万5000円ほどが目安です。
回転の遅い電動サンダー
物置は、うちのブログで初めて電動工具をすすめる対象です。理由は面積で、紙やすりだけでは下地処理が最後まで持たないためです。
| 比べる点 | 手作業 | 電動サンダー |
|---|---|---|
| 向いている範囲 | 1面の一部 | 物置の全面 |
| かかる時間 | 数時間 | 1時間ほど |
| 板への負担 | 小さい | 押し付けると変形する |
| 費用 | 数百円 | 5000円前後から |
選び方はサビ落としに電動工具が必要な3つの条件で解説しています。
メッキに対応した下塗り
缶に書かれた対応素材に、亜鉛メッキ、ガルバリウム、トタンのいずれかが入っているものを選びます。ここだけは値段で選ばないでください。
| 缶に書いてあること | 判定 |
|---|---|
| ○ 対応素材に亜鉛メッキやトタンがある | これを選ぶ |
| × 「鉄部用」とだけある | 選ばない |
| × 対応素材が書かれていない | 選ばない |
広い面を塗るローラー
畳5枚分を刷毛だけで塗ると、腕が持ちません。壁の平らな面はローラー、角と扉のふちは刷毛、と分けてください。 物置の壁のような鉄の平らな面をローラーで塗る手順は、【職人が教える】ペンキのローラーの使い方|6つの手順とムラ対策にまとめています。
- ローラー 6インチ前後 → 壁の平らな面
- 刷毛 50ミリ前後 → 扉のふち 角 ねじの頭
- ローラー用のバケットと網 → 塗料の量を整える
物置塗装のよくある質問

作業の前後でよく出てくる疑問をまとめました。どれも迷いやすい点です。
塗るのと買い替えるのはどちらが得か
板がしっかりしているなら塗るほうが安く済みます。道具をすべてそろえても1万5000円ほどで、物置の買い替えは本体だけで数万円からです。
ただし板が薄くなった物置に道具代をかけても、変わるのは見た目だけです。指で押してへこむ場所があるなら、買い替えを先に検討してください。
スプレーで塗ってはいけないか
物置には向きません。面が広いので缶が何本も要りますし、霧になった塗料は隣家の車や洗濯物まで飛びます。
屋外で、しかも風のある日が多い場所です。ローラーと刷毛のほうが、結果的に早く、やり直しもありません。
木製の物置も同じ手順でよいか
違います。この記事はスチール物置の手順です。木は塗料を吸い込むので、下塗りの考え方が変わります。
まず、自分の物置がどちらかを確かめてください。磁石が付けばスチールです。付かない場合は、木か樹脂の可能性があります。
費用はいくらかかるか
- メッキ対応の下塗り 1.6L → 3000円ほど
- 屋外用の上塗り塗料 1.6L → 4000円ほど
- ローラーと刷毛とバケット → 2000円ほど
- サンドペーパーと養生材 → 2000円ほど
- 電動サンダー(買う場合) → 5000円前後から
電動工具を買わなければ1万1000円ほど、買うと1万5000円ほどです。物置の大きさで塗料の量は変わるので、缶の表示と実際の寸法で計算し直してください。
何年もつか
塗料の種類と置かれている場所で変わるため、一律には言えません。缶に記載された耐用年数を基準にしてください。
日が当たる南側と西側から先に傷みます。年に1回、手でなでて粉が付かないかを見ておけば、次の塗り替えどきが分かります。
扉が開かなくなったらどうするか
塗料が乾ききる前なら、まだ間に合います。無理に力を入れず、扉のふちに沿ってカッターの刃を寝かせて入れ、くっついた塗膜を切ってください。
そうならないために、養生でレールと戸車をふさぎ、上塗りのあと一度だけ扉を動かしておくのが確実です。動かしたあとは、こすれた場所だけ筆で直します。
1日で終わらせる方法はあるか
ありません。下塗りと上塗りの間、上塗り1回目と2回目の間に、それぞれ乾かす時間が要ります。
急いで重ねると、下の層が乾かないまま閉じ込められて、あとから浮きます。乾かす時間は作業のうちだと考えてください。1日目に下地処理と下塗り、2日目に上塗り2回。これが現実的な組み方です。
まとめ

物置の塗装が剥がれるのは、腕のせいではありません。古い塗膜が粉になっていること、下がメッキでつるつるしていること、そして面が広すぎて下地処理が追いつかないことが原因です。粉を落とし、メッキ対応の下塗りでつなぐ。この2つで剥がれにくくなります。
そして屋根は塗りません。地面からは見えない面ですし、手すりのない場所で両手がふさがります。壁と扉を塗れば、地面から見える面の色はすべて新しくなります。
- 手に付く白い粉はチョーキング
- 粉を落とさないと粉ごと剥がれる
- 下はメッキなので鉄用のサビ止めは効かない
- 面が広いので電動工具を検討する
- 屋根は塗らず壁と扉だけにする
- レールと戸車と換気口はふさぐ
- 2日続けて晴れる日を選ぶ

まず手でなでて、粉が付くか見てみます。屋根はやめておきます。

それでいいんです。壁と扉が変われば、庭の印象はしっかり変わりますよ。
下地処理の道具は塗装の下地処理の7つ道具とむだのない予算を、下塗りの選び方はサビ止め塗料の選び方と初心者が迷う4つの分かれ道をあわせてご覧ください。

